2014年3月5日水曜日

スケルトン定借について:1

キューブが取り組んだ、「塚口コーポラティブハウス」「宇多野コーポラティブハウス」は旧建設省建築研究所で開発された、スケルトン定借というスキムを採用しています。

スケルトン定借は首都圏を中心に実績が積み重ねられていますが、「塚口コーポラティブハウス」は関西第一号 、「宇多野コーポラティブハウス」は環境共生型の木造テラスハウスとしては初となる事業でした。

スケルトン定借は我が国のマンションが持続可能性を持つ為に非常に重要な視点をいくつも示唆していると思います。しかし、一般の分譲マンションが持つ問題を根本的に解消するかもしれない可能性と革新性を持ち、その功績に対して建築学会賞等様々に評価されているスキムであるにも関わらず、まだ一般化するには程遠い状況です。

 ここで、改めてその内容を確認する意味で、平成11年に大阪ガスが発行する「ハウジングトレンド」という雑誌で2回にわたって紹介された記事をご紹介させて頂きます。(スペースの都合上、図表は割愛しております。また、記載されている肩書き等は当時のものです)


ハウジングトレンド No.144

特集・スケルトン定借(つくば方式)1

■「つくば方式」は定期借地権マンションの一種か

新しいタイプの住宅は、人をいつも幻惑させる。「つくば方式マンション」もその例に漏れない。このマンションは、「スケルトン+ 建物譲渡特約付定期借地権 + コー ポラティブ」という新しい方式の集合住宅である。では、これは定期借地権マンションの一種なのか。「つくば方式マンション」を話題にすると、マンション業 界の人々は定借の枠内で議論し続けようとする。しかしそれでは、肝心の考え方の転換点に到達できないのである。核心を捉えないまま、小さな話で終わってし まいかねない。
「つくば方式マンション」は、別名「スケルトン定借」という。端的に定義すれば、スケルトン(構造躯体)を60 年間利用する権利を購入し、自由にインフィル(内装設備等)を設置して住む方式の集合住宅ということである。目的は、あくまでもスケルトンという建築理念 であって、定借は手段にすぎない。そこがスタートポイントだ。

■ではなぜスケルトンなのか

スケルトンに注目する理由は、省資源のためである。資源を無駄づかいしない長期耐用性住宅の実現という考え方だ。これまでのようなスクラップアンドビルド ではなく、省資源・廃棄物抑制に繁がる 100 年 耐用の良質なストックの形成という目標を実現するために、スケルトン住宅は有効だとする考え方である。いわば西洋流の「品質の確かなものを選び、それを時 間をかけて、ゆっくりと愛着を持って使いこなす生活」にそろそろ転換しませんかという提案である。日本もそういう質実精神を優先しなければならない時代に 突入しているのである。
前号でリサイクル、廃棄物抑制、循環型社会のモノづくりを特集した。その対策のひとつが住宅の長寿命化であった。そういう意味でスケルトン住宅の実現と、その実現を誘導するための公的助成措置が今後の重要な施策になる。

■多様な発想があっていい

スケルトン定借は、地主・入居者ともにメリットの多いよく考えられた方式である。この方式はもっと注目されてよい。今回は、スケルトン定借の仕組みを紹介 した。次号では、実際の事業例を数字入りで取り上げる予定である。しかし、この方式にこだわる必要はないのである。もっと多様に発想すべきである。
ス ケルトンを軸にして下記のような多様な組み合わせも発想できるはずだ。たとえば、長寿命スケルトンのコストアップ分を 許容できる高級分譲マンションは実現可能である。現在の所有権型の高級分譲マンションは、建て売りとしながらも購入者の要望を受け入れてフリープラン化し ているのが実態である。スケルトン住宅という考え方が欠落しているだけだ。誤解を恐れずに言えば、スケルトン住宅という考え方を導入すれば、旧タイプは新 タイプに変身可能となる。
・スケルトン + 定期借地権 + コーポラティブ ・スケルトン + 所有権分譲 + 建て売り
・スケルトン + 定期借地権 + 建て売り ・スケルトン + 賃貸 + コーポラティブ
・スケルトン + 所有権分譲 + コーポラティブ ・スケルトン + 賃貸 + 建て売り

価格の低減と百年住宅を両立させた、スケルトン定借(つくば方式)への期待

「つくば方式マンション」と呼ばれるユニークな住宅供給方式への関心が高まっている。正式には、「スケルトン型定期借地権住宅」という。略して、スケルトン定借。
これは建設省建築研究所が長年研究開発を続けてきたものだが、 1996 年 8 月に、その第 1 号プロジェクトが茨城県つくば市内に完成した。また、住宅金融公庫大阪支店が主宰する「大阪まちづくり研究会」の活動によって、関西でも普及しつつある。 しかし、その実態はまだまだ十分に知られてはいないのが現状ではないだろうか。
私 たちは、スケルトン住宅と言えば、「スケルトン」という構造躯体と、「インフィル」という内装設備等を分離して考える 住宅供給方式だということくらいは知っている。そして、定期借地権住宅という言葉も今や市民権を得た存在になってきたので、これも理解しているつもりでい る。しかし、この二つの言葉を単純に言葉どおりにつないでみても、実際の姿は何も見えてこないのである。
た とえば建築的なことでも、スケルトンとインフィルの間の給排水竪管などがある部分に、「共用インフィル」と呼ばれる独 自の概念を取り入れた。どこまでを共用部分とみなし、どこまでを専用部分とみなすのか。また、「専用インフィル」も、将来ライフステージに合わせて間取り の変更も自由にできるように、できるだけ更新しやすいようにしておかなければいけないので、「共用インフィル」との関連も十分に考慮しておく必要がある。 こうしたつなぎの部分にどれだけの自由性をもたせるかによって、コストも大きく変わってくる。とにかく、スケルトンの範囲の定義が難しいのである。
また、定期借地権との組み合わせにしても、ことはそう簡単ではない。単純に「建物譲渡特約付借地権」を設定しただけでは、のちに述べるように問題が残る。そして、その譲渡価格の算定方法も、当初の契約時点で決めるのはなかなか難しい。
こうしたいくつかの問題点をクリアするために、スケルトン定借には独自の工夫が盛り込まれている。少なくとも 60 年間は、地主は満足のいく土地活用ができ、入居者も安心して住み続けることのできる仕組みになっている。本特集では、その詳細をレポートしてみたいと思 う。

●一般定期借地権は地主にとってもまちづくりにとっても、現実的には問題点があると考えられている。

一般定期借地権は、社会的な意義も大きい土地活用の方式としてかなり普及してきたが、次のような問題点が指摘されている。
まず、何よりも集合住宅に適用しにくいということが問題である。どういうことかというと、集合住宅を一般定期借地権だけで建てた場合には、 50 年後に建物を壊して土地を返すことが難しいのだ。また、これからは省資源という観点から 100 年住宅が求められているというのに、定期借地権だからと 50 年後に取り壊すというのではあまりにも不合理である。
しかし最大の問題点は、 40 年くらい経過すると、建物修繕の合意形成が難しくなるということ。どうせ壊すのだからとスラム化する恐れが大きい。
そのほか、定期借地とはいえ、長い期間にわたって土地利用が凍結されると考えている土地経営者が多いようだ。
それから、これまでは相続時の底地評価が路線価の 8 割 と高いため、地主が土地を提供しにくいという事情があった。あまりにも市場価格とかけ離れていると指摘する声が高かった。しかしこの問題は、昨年夏に普通 借地権なみの評価に改定されている。これによって、定期借地権は土地利用者にとって選択しやすい土地利用方策となり、今後は最も必要とされる「便利な場所 での住宅供給手法」としても大いに活用できることになった。
スケルトン定借はいよいよこれから出番を迎える。仕組みもほぼ確立し、これから普及段階に入っていく。完成した事例も、まだ、建設省建築研究所のスタッフ が直接支援して実現した 3 つの研究モデル事業しかない。しかし、すでに関東・関西でそれぞれ 5 つほどのプロジェクトが進行中である。
先の 3 つのモデル事例を紹介しておく。詳細は、日経アーキテクチュア誌 1996 年 11 月 4 日号に紹介されているので参照されるとよい。ここでは同誌から要点のみを抜粋させていただく。

○スケルトン定借(つくば方式)第1号
「メソードつくばⅠ」 
設計・施工/竹中工務店

竣工/1996年8月
構造・階数/RC造・地上5階
敷地面積/1364㎡
延べ面積/2278㎡
住戸数/住戸12戸+地主経営の店舗2戸
各住戸の専有面積/80㎡~117㎡
「在来型の大スパン工法+ツインシャフト」によって設備の可変性を確保している。階高2900mm、スラブ厚220mm、建物四隅の耐震壁は厚さ 220mmを確保。設備はゾーニングと交換性に工夫をこらしている。パイプシャフトを住戸内部ではなく、廊下とバルコニーの両方に取る事で、更新のしやす さと水回りのフレキシビリティ(住戸の約半分のゾーンの中ならどこでも水回り設備が配置できる)を確保しているのが特徴。

○スケルトン定借(つくば方式)第2号
「メソードつくばⅡ」 
設計・施工/東急工建・アタカ工業JV
竣工/1996年10月
構造・階数/RC造・地上3階
敷地面積/392㎡
延べ面積/355㎡
住戸数/4戸(2戸は地主経営の賃貸)
「PCラーメン構造+逆スラブ工法+内装の部品化」を図っている。この方式は大きな床下空間をもつスケルトンを実現できる。階高を3200mmとし、すべての住戸に床下収納を設けた。さらに横引き方式の配管も床下に設置。これにより住戸内のどこにも水回り設備を設置できるフレキシビリティを確保している。

○スケルトン定借(つくば方式)第3号
「松原アパートメント」
基本計画/高市 都市・建築・デザイン
設計・施工/佐藤工業
竣工/1998年5月
構造・階数/RC造・地上4階
敷地面積/約740㎡
延べ面積/約1200㎡
住戸数/11戸
各戸の専有面積/57㎡~126㎡
工法は高耐久性コンクリートを用いた「純ラーメン構造の逆梁+乾式二重床」を採用し、プランの自由度を最大限に確保できるようにしている。また、住機能を維持しながら更新作業ができるようにするため、設備面ではツインシャフトに加え、階高3200mmを確保し、床下に横引き配管を行うなど無理のない設備計画を実現している。

●スケルトン定借は、先に述べた一般定期借地権の現実的な問題点を解決するために、工夫をこらし、新しい土地活用法として実用化された。

つくば方式は、もともと定期借地権住宅として開発されたものではない。土地を「定期借地」するのではなく、長持ちする建 物のスケルトン部分を「定期利用」するという発想から生まれたものである。このことを知っておくと、スケルトン定借の仕組みはぐんと理解しやすくなるはず である。
では、その新しい工夫のポイントを箇条書きにしてみよう。

1. 30 年後に建物を買い取ることで、確実に借地を終了する方法を採用した。
(この場合、買い取る資金も必要としない工夫も盛り込まれている)

2.  30 年後の時点で建物を買い取らずに、さらに 30 年間借地を延長すること ができるという選択肢をつくった。

3.  60 年後には建物が無償で戻ってくるので、建物の買い取りが子孫の世代の負担にならない。安心して土地経営ができる。

4. 100 年近く有効利用できる長期耐用性のあるスケルトン住宅を建てるので、建物の早期老朽化による経営失敗の危険を避けることができる。また、60年後も有効利用できる。

5.  事業コーディネーター(企業、建築事務所、公団公社等)が入居者を集めて から建物を建てる建設組合方式(コーポラティブ方式)を採用すれば、建設資 金も入居者負担で、地主は土地を貸地として提供するだけ。失敗のない土地経営ができる。

要するに、地主は資金ゼロで100 年住宅を建て、土地は当初の 30 年間貸すだけ。 31 年目からの 30 年 間は入居者に一括借り上げしてもらう賃貸マンション経営をするような形になるということである。入居者は自分で設計した住宅に住むことになるため、永住志 向は強い。したがって、空き家の心配がなく、途中での転居も少なく、安定経営をすることができ、なおかつ、相続税対策にもなる。

スケルトン住宅は、何度も言うように、建物をスケルトン(構造躯体等)とインフィル(内装設備等)とに分けて、両者を別 々の仕組みで設計・供給するという考え方に基づいたものである。その狙いは、建物(スケルトン)の長期耐用性と、内装設備(インフィル)の可変性にある。 内装や設備は短期間で老朽化していくので、極めて合理的な考え方と言える。
スケルトン住宅は3 つのケースが考えられる。すなわち、スケルトン賃貸、スケルトン分譲、スケルトン定借である。それぞれの問題点を知っておくと、スケルトン定借は一層理解しやすくなる。

スケルトン定借は、簡単に言えば、スケルトンが建つ土地に定期借地権(建物譲渡特約付)を設定、建物は当初はスケルトン分譲という形になるが、30 年後にはスケルトン賃貸に変わるという仕組みである。ここには 30 年後に土地所有者が建物を買い取ることによってスラム化を防ぐ工夫が施されている。
この方式は、スケルトン賃貸、スケルトン分譲の欠点を補って、なおかつ、有利な点が数多くある。
まず第一に、定期借地権と組み合わせることで、住宅価格が下げられるということ。スケルトン住宅では長期耐用性のある構造体にする必要があるが(定期借地 権を活用するため最低でも60 年以上の耐用年数が要求される)、そのコスト上昇分を吸収できる。そればかりでなく、長期耐用性のあるスケルトンは、 60 年後に定期借地権が消滅したあとの利用メリットもある。
第二に、スケルトン賃貸で問題となる所有権や融資に関する問題点も、スケルトン定借では建設時に分譲という形をとるので解消される。30 年以降はスケルトン賃貸という形になるが、この段階では地主も入居者も新たな資金を用意する必要がない。
第三に、スケルトン分譲と同様の完了検査の問題は残るが、設計段階から入居者を確定する方法(コーポラティブ方式など)をとれば、十分に対応できる。
第四に、入居者が退去するときはインフィルはゼロ査定となるが、長期間にわたって使用できる権利をもつことができるので、入居者への影響は比較的小さいと思われる。

●スケルトン定借の法律的な位置づけについて

スケルトン定借は、「建物譲渡特約付定期借地権」をベースにしている。あえて誤解のないように断っておくが、単なる「建物譲渡特約付借地権」ではない。 「建物譲渡特約付借地権」(借地借家法23 条)の条項だけでは、特約が実行されなかったときの権利関係が不明確であるということで、期間 50 年以上の「一般定期借地権」(同法 22 条)を併せて設定しているのである。
建物譲渡特約付借地権を単独で設定した場合は、図表2 で見るように、 30 年後に譲渡特約が行使されても行使されなくても、借家権あるいは借地権がほぼ永続することになり、地主は土地を返還されても実質的には自由に処分すること ができない。したがって、真の意味での定期性のある借地とはなりえないのである。
このことが建物譲渡特約付借地権のネックとなって、地主の承諾を得ることが難しくなっているのであり、他の一般定期借地権や事業用借地権に比べて普及しない一因になっている。
図表3 を見ていただきたい。これは、存続期間が 60 年の一般定期借地権に、 30 年後の建物譲渡特約を設定した場合である。このように、建物譲渡特約付借地権は、一般定期借地権と併せて設定した場合において初めて定期性を有し、 60 年後に地主への実質的な返還が確保される。
つくば方式は、一般定期借地権のうえに建物譲渡の特約を重ねるというハイブリッドな形態といっていいだろう。
建物譲渡特約付定期借地権契約を行ううえで、もうひとつ問題になるのは、買い取りの対象となるスケルトンが建物のどの範囲となるかを明確にしておかなければならないということである。
この定義がないと、譲渡価格や譲渡後の家賃の設定方法、再建築費や増改築の取り扱い、修繕費の負担方法などを決めることができない。
つくば方式では建物を構成する部位を3 段階に区分して、定期借地権の契約内容や建物の維持管理の分担などを取り決めている。しかし、現実には、建物の工法によって各区分に属する部位は変化することになる。

●3段階区分の定義

* スケルトン
原則として、建物の基本性能にかかわる共用部分を「スケルトン」と定義し、地主の合意がなければ、リフォームできない部分とした。これが地主の買い取り対象となる部分である。

* 共用インフィル
原則として、住戸外周部など専有部分と他の部分を区分する境界的部分にある内外装や設備を「共用インフィル」という。リフォームに当たっては管理規約に定めるルールに従う。地主の買い取り対象には含まれない。

* 専用インフィル
原則として、専有部分にある内装や設備を「専用インフィル」という。居住者が自由にリフォームできる部分。地主の買い取り対象には含まれない。(図表4 参照)

●この「建物譲渡特約付定期借地権」に、長期耐用性のあるスケルトン住宅と、家賃相殺契約を組み合わせたものが、スケルトン定借の仕組みの骨格をなしている。

ポイントとなるところを整理してみよう。

1. 建物譲渡特約の地主としてのメリット
賃貸人(地主)は、30 年後に建物を買い取って借地権を消滅させてもよいし、また、買い取らずに一般定期借地権を継続させてもよいとした。その代わりに、将来発生する建物の取り壊し費用を負担することになる。

2. 建物譲渡特約付行使期間の限定
地主が建物譲渡特約を行使するか否かを決める期間を、30 年後 1 年以内とした。こうすることによって、賃借人(入居者)が不安定な立場に置かれることを避けている。なお、 31 年が経過すると、地主は建物を買い取る権利を失う。

3. 建物譲渡特約が行使されない場合の対応
この場合は、入居者はさらに30 年間、持家の状態が続くことになるので、入居者のメリットは大きい。一般定期借地権がそのまま継続することになるわけで、期間満了後は建物を無償譲渡して 退去することとした。住宅・都市整備公団の定借マンションは、これと同じ考え方をしている。

4. 建物の譲渡価格について
譲渡価格の算定は、新借地借家法では「相当の対価」としているが、30 年後の「相当の対価」を当初の契約時点で決めるのは難しい。つくば方式では、スケルトンのみを地主が買い取ることとし、スケルトンの再建築費の 40 %に設定した。インフィル建築費はゼロ査定、借地権価格も含めていない。
40 %というのは、建物を 60 年で償却する場合の 30 年時点での償却割合を考慮して求めたものである。
なお、30 年後に再建築費の算出が難しくなった場合は、最初に建てた時のスケルトン建築費の 40 %に、 30 年間の消費者物価上昇分をのせて再建築費とする、と取り決めている。物価に連動して引き上げられるので、それなりに高い価格になる。
但し、建物修繕が十分に行われていなかった場合は、相当額が減額される。このことが大きな意味をもつ。これがインセンティブとなって、先に指摘したような建物維持管理が行き届かなくなりスラム化するという問題が克服できるのである。

5. 31 年目からの建物の賃借料
建物譲渡特約が行使された場合は、建物の賃貸借契約に移行することになる。つくば方式ではスケルトンだけを借りる形にな るので、内装や設備のリフォームは自由にできるとした。このときの賃借料は地代相当分程度の少額だが、予め決めておき、スケルトン家賃の算定式を標準約款 に盛り込むこととした。

6. 建物譲渡金と家賃の相殺契約
31 年目からスケルトン賃貸になるわけだが、その場合の家賃を建物譲渡金と相殺していく方式を取りいれた。これは地主と入居者双方にとって魅力的な仕組みである。
建物譲渡金を受渡しないで、そのまま地主に預託し、その返済金と家賃を毎月相殺していくのである。税法上は、店舗建設などで広く行われている建設協力金と同じ扱いになり、課税関係は発生しない。
この家賃相殺契約の導入によって、地主は、建物譲渡を受けるに当たっての資金を準備する必要がなくなり、同時に借地権をも消滅させることができる。また、 入居者も、31 年目以降は基本家賃を前もって払い込んである形となるため、残りわずかの家賃(地代相当分程度)と維持管理費の負担だけで住み続けられる。

7. 建物の増改築について
スケルトン定借では、構造躯体(スケルトン)は増改築することはできない。内装設備等(インフィル)は自由に改築できる。ただし、退去するときには、原状復帰(除去)を原則としている。

8. 30 年未満の持家期間における転売について
この期間の転売については、地主に優先買受権を設定し、地主が希望すれば契約書に定めた算定式の価格で買い取ることができることとした。地主が買い取らな い場合は、第三者に売却することになる。つくば方式のスケルトン定借は、一定の資産価値が保証されているのである。

●地主・入居者がそれぞれの権利関係とメリットを分けて考えてみよう。

これまで述べてきたことと重複する部分も多いが、いまいちど内容を地主と入居者それぞれの立場にたって分けて考えてみよう。

○地主の権利

1. 30年間土地を貸すだけで、30年後には土地が戻ってくる。(定期借地権契約)

2. 建物は入居者が集まって建てるため、地主はいっさい建築費を負担する必要がない。

3. 30年後に入居者から建物を買い取る場合(建物譲渡特約の行使)は、60年後まで賃貸マンション経営ができる。(入居者には借家権が残っている)

4. この場合、建物の買い取り費用は、入居者に60年後までの賃貸を保証する(基本家賃受取済み)ことで相殺されるので、資金を準備する必要はない。

5. 61年目以降は、建物を取り壊して更地に戻すこともできるし、リフォームをして新たに賃貸事業を行うこともできる。

6. 30年後に建物を買い取るか否かの選択は自由。買い取らない(建物譲渡特約の不行使)場合は、貸地経営をそのまま60年まで続けることになる。(定期借地権契約の継続)

○地主のメリットと収入

1. スケルトン定借なので、地主は土地を貸すだけ、建物は入居者が建ててる。その建物の構造体(スケルトン)は100年 の耐用性があり、インフィルは入居者が自前で改築・更新する。要するに、地主は手間がかからない。その上、①建物の長期維持、②入居者の長期居住、が可能 となる。

2. 自己資金ゼロで賃貸マンション経営ができる。入居者が集まってコーポラティブ方式でマンションを建てる場合は、地主は建築費を負担することなく、30 年後には、それを買い取って賃貸マンション経営をすることができる。しかも、その買い取り資金も準備する必要がない。

3. 当初の30年間は貸地経営だから、一般的な賃貸マンション経営と違って、不安となる空き家リスクもない。また、30年以後60年までの賃貸マンション経営も、基本家賃受取済みの貸家となるので安定した収入が約束されている。

4. 30年後に、建物を買い取って賃貸マンション経営に切り替えるか、それとも定期借地権契約を継続してそのまま貸地経営を続けるかという選択ができるので、土地利用の自由度が高い。

5. スケルトン住宅は可変性があるため、用途の変更もできる。入居者が転居した場合や60年後の契約完了後には、店舗や事務所、貸家などと複合化して多角経営もできる。また、自宅を併設することもできる。(図表6参照)

6. 定期借地権の設定により、相続時の土地評価額が下がる。前項に述べるような複合化プランにすると、相続税対策効果はさらに大きなものとなる。(図表7参照)

7. スケルトン住宅の建設は、アパート経営と異なり、高級分譲地なみの良好な住環境の実現につながる。特に、自宅併設の場合は効果的と言えよう。

8. 長期的に見れば、街の質をよくし、土地の価値を高めることにつながる。入居者にしてみれば、インフィルが自由設計なので建物への愛着も生まれ、住環境にも費用をかけやすくなるからである。

●地主の収入

スケルトン定借を採用した場合、どれくらいの収入になるのか。下記の数字は一例にすぎないが、土地を価値あるものにできるということと、将来を見据えた土地活用ができるというところがポイントである。

*地価が坪当たり100万円の100坪の土地に、10戸のマンションを建てた場合の目安。

当初の30年間(貸地経営)
保証金 3000万円(@300万円)
地代月額 20万円(@ 2万円)

30年以降60年まで(基本家賃受取済み貸家経営)
地代相当月額20万円(@約2万円)
維持管理費 実費

○入居者の権利

1. 借地契約をして、入居者が共同でマンションを建設する。(定期借地権契約)

2. 入居後の30年間は、建物は入居者の持家である。建物と借地権を転売する こともできる。土地所有者に買い取りの優先権があるが、買い取らない場合は自由に転売できる。

3. 31年目以降は、建物を土地所有者に譲渡することになるので借家住まいとなる。入居者は土地所有者と建物の賃貸借契約を締結する。借家権は法律で保護される。

4. この場合、入居者は建物の譲渡金と基本家賃を相殺する契約を締結するため、以後は、残りの家賃の一部と維持管理費の支払いだけで、そのまま住み続けることができる。

5. 30年後に、土地所有者が建物を買い取らない(建物譲渡特約の不行使)場合は、定期借地権がそのまま60年後まで続くので、ずっと持家の状態となる。

6. 30年後に、土地所有者に建物を譲渡し退去する場合は、スケルトン再建築費の40%相当額を受け取ることができる。

7. 31年以降60年までの途中で転居する場合は、預託金を精算して、インフィルを除去(または無償譲渡)する必要がある。

8. 1年後には、インフィルを除去(または無償譲渡)して建物を土地所有者に引き渡す。

○入居者のメリットと費用

基本的には、インフィルを60年間専有する権利あるいはスケルトンを60年間利用する権利を購入し、自分の暮らしに合わせ、自由設計の家を作ることができる、と考えればよい。

1. 土地を購入しないで、60年間の定期借地権付マンションを建てることになるので、購入価格が安い(一般分譲の5~8割程度)。その分広めの住戸にすることもできる。(図表9参照)

2. インフィルは、入居者のライフスタイルやニーズに合わせて、間取りや内装、設備などを自由に注文設計できる。なおかつ、60年間、自由にリフォームができる。

3. 一般分譲マンションの場合は、30年前後で入居者が大規模修繕や建て替えを検討する必要に迫られる。それが新たな負 担を強いられることになる。そのうえ、所有者全員の合意形成も難しい。ところがこの方式では、大規模修繕が必要になる30年後には建物を地主に譲渡する契 約を締結するので、そういう心配はいらない。

4. 30年後には建物(スケルトン)を地主に譲渡することになるので、定期借地権付の持家ではなくなる。しかしその譲渡金で以後の30年間、つまり31年目から60年目までの家賃を前払いしたことになり、安い家賃負担で老後も安心して住み続けられる。

5. コーポラティブ方式の場合、安心感のある永住型のコミュニティができやすい。インフィルの注文設計の過程で、建物を大切にする仲間意識が生まれ、維持管理が円滑にすすめられる。

○デメリット

建設組合の発足から建物が完成して入居するまでに、平均1年半~2年の時間がかかること。(自由設計の期間として半年~1年、工事期間1年)

1. 60年後には原則として契約の更新ができないという、期限付きの権利であること。

2. 31年目以降は持家でなくなり、それ以後は借家となる。契約期限の60年目には借家権もなくなり、インフィルもゼロ査定、資産としては何も残らないこと。
2項と3項については、60年間の利用権を購入してその期限が切れたわけだから、短所と見るかどうかは考え方しだいである。

●入居者の費用

地価が坪当たり100万円の土地で、専有面積約100㎡のマンションを取得した場合の目安(金額は一例、立地や経済情勢により異なる)。一般的な分譲マンションでいえば、販売価格が5000~5500万円相当のものを想定している。

当初の30年間(持家)
当初の建築費 約2700万円
当初の借地保証金 約 300万円
地代月額 約 2万円

30年以降60年目まで(借家)
スケルトン賃料月額(地代相当額) 約 2万円
維持管理費月額 約 2万円

住宅金融公庫大阪支店のスケルトン定借による「まちづくり」支援活動

一昨年から住宅金融公庫大阪支店の業務運営方針に大きな変化が見られる。「関西のまちづくり支援」を全面に打ち出し、住民が自主的に共同して住宅を建設する事業への融資に力を入れているのである。
大阪支店では、現在、大阪まちづくり研究会を設けて、特に、スケルトン定借のコーポラティブタイプの普及に積極的に取り 組んでいるが、これが大きな注目を浴びている。もともと関西は全国的に見ても、コーポラティブ住宅の活動が盛んなところであり、それに比例して、公庫の 「個人共同住宅建設資金融資」も多くなっているのだが、「まちづくり」をもっと積極的に支援しようということで、その最も有効な手段として、関西ではまだ 実績の少ないスケルトン定借(つくば方式)の早期実現・普及に意欲的に取り組むことになったのだそうだ。

推進者は、企画広報課の竹井隆人氏である。スケルトン定借(つくば方式)の共同開発者の一人で、1997年4月に大阪支店に転勤してこられた。同氏に、これまでの経緯と今後の展開について伺ってみた。
「結論が先になりますけれども、最終的な理想としては、住民が主体となって地域のコミュニティを向上させる形で、自分たちの家も直接つくっていくようなま ちづくり、そういう民間の非営利団体ができて、そこへ公的な支援をしていくという姿が一番望ましいわけです。
その理由は、これまでの住宅政策が個々人の持家促進にかたよりすぎて、各戸バラバラな住宅供給になってしまっていたきら いがあり、まちづくりという発想がない。そういう反省も踏まえて、今後はもっと、まち全体に対する融資に力を入れていくべきだと考えています。たとえば神 戸には、官民協働のまちづくり協議会がありますね。ああいうところで住宅の供給開発を目指すようなコミュニティづくりができればと思っています。
話は変わりますが、スケルトンというのは、いわば人工地盤と言ってもいいかと思いますが、土地所有者がそれをつくって、 その上に入居者が家を建てていくというのが本来の姿です。ところが現行の法制度では入居者がつくらざるを得ない。ですから、こういうスケルトン定借のよう な形での家づくり、まちづくりが大きな意味をもつと言えるのではないでしょうか。
それに、これからの高齢社会では郊外の一戸建てよりも都心の集合住宅がますます求められるようになります。しかし、そう いう住宅は、今日では定期借地権を活用しないかぎり、とても実現は難しくなっている。高齢化ということで、安全で快適な生活へのニーズは一層高まってい く。分譲マンションでは価格的にも高いものになるし、コミュニティの形成はあまり期待できない。私たちがコーポラティブ方式のスケルトン定借を推進してい るのは、そういうことへのひとつの答えだと考えているからなのです。コーポラティブ住宅は初動期においてコミュニティ形成が前提となるだけに、より本来の まちづくりにつながります。しかも、地主・入居者双方にとってもメリットが大きいですからね。
これは私の個人的な研究に基づく意見ですが、これからは住宅をもっと政治的な意味で、住民の政治参加を促すものとして、 新しい視点で見直していく必要があるのではないか、と思っています。その意味では、コーポラティブ方式なら住民参加やコミュニティへの発言にもつながりま すから、地方分権の原点として位置づけられるものだということができます。」
こういうことで、定期借地権とコーポラティブ住宅を融合させたスケルトン定借が、脚光を浴びることになったわけである。

●大きな反響に応えて、事業支援活動も軌道に乗ってきた。

大阪支店は1997年10月に、「まちづくりを支援する協同建設型の住宅供給促進研究会」(略称、大阪まちづくり研究 会)を発足させた。これは竹井氏の企画によるもので、自ら事務局を引き受けておられる。座長にはつくば方式の開発者・小林秀樹氏(建設省建築研究所)を迎 え、弁護士や建築家などの専門家、地方公共団体、それに有志企業の参加をえて、この1年、積極的な活動を展開してきた。(図表10参照)
まちづくりに貢献すると考えられるコーポラティブ住宅の普及促進が目的である。入居者が集まって設計から建設までを自分 たちで共同して行うこの方式は、入居者によるまちへの参加を促進し、また、コミュニティを増進させる期待がもてるというわけだ。1棟だけならそれだけのコ ミュニティでしかないが、竹井氏が先に述べられたような視点で、まちづくりを進めていくことができれば、長期耐用性のあるスケルトン定借は、将来、地域コ ミュニティの向上に大いに役立てることができる。

(注)スケルトン定借には建売方式もあるが、公庫大阪支店では、住民が主体となるコーポラティブ方式に限定して支援活動をしている。

まずは、この優れた住宅供給手法を広く周知させ、地主にも事業への土地提供を促すことが先決であると考えられた。これまでの経緯を見てみよう。
1998年3月、地主と専門家を対象とするシンポジウムが神戸市内で開催されたが、600名を超える参加申込みがあって 大きな反響を呼んだ。スケルトン定借はすでに、大都市で安価で良質な住宅を供給する方式として、社会的にも大きな評価を得ていることをアピールし、この事 業に土地を供給する人には安定した経営と節税効果をもたらすことを知ってもらうよい機会となった。新聞のパブリシティ効果もあって、後日、活用の申し出の あった土地情報は30件あまりに及んだという。
研究会はまた、こうした活動を実りあるものにするために、事業化支援にも力を入れている。これまでコーポラティブ住宅の 立ち上げには、入居者同士の相互調整を図るコーディネーターの労力が莫大で、それが普及のネックになっていた。そこで特に負担の大きい、地主との交渉が成 立するまでの初期リスクを研究会が引き受けることにした。
そうした努力が次々と実を結んでいる。先の30件におよぶ土地情報の調査の中から、1998年8月には、のちに関西第1 号のスケルトン定借となる「塚口コーポラティブハウス」プロジェクトが基本計画を策定する公開コンペを実施するところまでこぎつけた。このコンペを地主の 了解を得て公開にしたのは、地主の利点やスケルトン定借の可能性を、実際の建設計画の事例に則して興味のある多くの方々に理解してもらおうと考えたからで ある。
続いて10月には、芦屋プロジェクトの基本計画及び事業コーディネート公開コンペが実施され、阪急電鉄と三井建設のJV のプランが優秀作品に選定された。従来のコーポラティブ事業では中小の設計事務所や建築事務所がボランティア的に取り組む場合が多かっただけに、阪急電鉄 という大手ディベロッパーの参画は注目すべきことといえよう。
さらに、このほか阪神間で誕生した5つの計画プロジェクトを支援するために、11月には、入居者向けの公開セミナーが企画された。200人以上の参加者を 集める盛況ぶりで、スケルトン定借のしくみやメリットの解説、実際の居住者の体験談に熱心に耳を傾けていた。
12月には、先の塚口コーポラティブハウスの施工企業を選定する技術コンペを行っている。基本計画のコンペ同様、この時 も地主の了解を得て公開された。これは通常の価格入札方式ではなく、限られた設計・上限の定まった建築費を前提に、建物の高耐久性、将来的な設備の更新性 を競技するという、珍しい業者選定方式で行われた。

研究会活動としては、ほかにコーディネーター養成講座の後援などもあるが、スケルトン定借が特に都市部に良質・低廉な住宅を供給する方法として優れている ので、震災地や密集住宅市街地における再建にも活用できるとして、その種の事業を積極的に支援しようとしている。
なお、大阪まちづくり研究会は、本年度いっぱいで一応活動を終了する予定で、あとは1998年7月に東京で発足した「ス ケルトン定借普及センター」の関西支部を設置してそこに引継ぐことを志向している。本年4月以降は、よりオープンな形で普及活動が展開されることになりそ うだ。

スケルトン定借(つくば方式)は、いよいよ研究段階から民間事 業として普及する段階に入ったようである。スケルトン定借 普及センターへのバトンタッチもそれを物語っている。この特集では、スケルトン定借のしくみやメリットの解明に多くのページをさいた。そして、住宅金融公 庫大阪支店の先導的なまちづくり支援の実情を追いかけながら、コーポラティブタイプの意義も考えてみた(ここまでの実例は全てコーポラティブタイプで行わ れている)。今後はディベロッパーが参入するようになると、建売タイプの(つくば方式)も普及していくものと思われる。まだまだ勉強すべき材料はたくさん ある。
次号は、スケルトン定借特集の続編として、ケーススタディを取り上げ、もう少し具体的な数字で掘り下げてみたいと思っている。

(注)ス ケルトン定借普及センターは、民間の非営利組織である。普及段階への移行に伴い、事 業者の育成やトラブル相談などの役割を担う。つくば方式の意義に賛同するものはだれでも加入できる。相談窓口は、下記に記す通りである。


スケルトン定借(つくば方式)普及センター: http://www.skeleton.gr.jp/index.html



2014年1月7日火曜日

コーポラティブハウスに関する識者の見方

昨日ご紹介した「住宅新報」の記事において、日本マンション学会会長の小林秀樹氏に、コーポラティブハウスに関するコメントを寄せて頂いたので、ご紹介いたします。


コーディネーターは「指揮者」 
能力次第で居住者満足度を左右

コーポラティブ住宅のメリットとデメリット、そしてその特有の住宅取得・供給形態がどのような可能性を秘めているのか。住宅政策・都市問題に詳しい小林秀樹千葉大学教授に聞いた。

識者の見方

―コーポラティブ住宅は通常の分譲・賃貸に比べ居住者の満足度が格段に高まるとされるが。

「設計・施工面、価格の透明性の確保といった面から、一般に満足度は高まるのは確かだ。ただしコーディネーターの能力に(事業の成否が)左右される点に注意が必要だ。がこの点も、熟練のコーディネーターが実施すれば、ほとんど気になるデメリットにはならない」

―完成までに時間がかかる、建設費が割高になりやすいのが若干の難点だとの指摘もあるが。

「時間がかかることと建設費の問題は、注文建設では当たり前のことだと認識するべき問題。仮に転売する際の値付け(流通価格)では、個別設計して費用が アップした分は評価されにくいのが普通(車にオプションを付けても中古時の評価アップはわずかであるのと同じ)。しかし、標準設計程度または同等以上には 評価されるため、不利と言うほどのことではない。コーディネーターが最初の段階で、『自由設計した建築費のアップ分は中古段階では評価されにくい』ことを 伝えて事業を進めれば、不満はほとんど聞かれない」

―コーディネーターの役割については?

「コーポラティブには、ユーザー主導型とコーディネーター主導型がある。実績の9割以上は後者。前者のユーザーが主導し、コーディネーターが調整役にとどまる例は希であるとともに、ユーザー同士の合意形成も大変になる」

「コーディネーター主導型は、簡易型コーポラティブとも呼ばれ、手軽にコーポラティブ住宅の自由設計メリットを享受したい人々に歓迎される。この場合の コーディネーターは、事業を円滑に遂行するための全責任を担う『指揮者』。その能力が高ければ、自然に居住者満足度も高まり、建物のでき上がりもよくな る」

―コーポラティブ住宅の可能性についてはどうか。

「今後は、マンションの自主建て替えや密集地の共同建て替えなど、コーポラティブ住宅のノウハウが必要になる場面が多くなる。このため、広い意味でコーポ ラティブ住宅への期待は高まる。それだけに、十分な経験とノウハウを身に付けたコーディネーターに対する期待は大きい」

2014年1月6日月曜日

あけましておめでとうございます。

あけましておめでとうございます。
本年も、どうぞよろしくお願いします。

2011年の年初に、業界紙の「住宅新報」でコーポラティブハウスに関する特集記事が組まれました。この記事中で、キューブの考え方を分り易くまとめて頂いているので、改めてご紹介致します。


論点 コーポラティブを考える

コーディネーター その役割は・・・   円滑な事業のために

コーポラティブハウスを実際に実現するには様々なやり方・方法があるが、入居者となる参加者の考えを集約しながら、集合住宅づくり事業としてい かに円滑に進め、個々の希望を実現していけるかは、全体を取りまとめて調整するコーディネーターの手腕いかんにかかっている。コーディネーターはコーポラ ティブ事業に具体的にどうかかわるべきなのか。関西でのコーポラティブ住宅の第一人者として評価の高いキューブ(神戸市)社長の天宅毅氏が語った。

”ティーチャーにあらず”

■”矛先”になる

「キューブでは、最もスムーズに事業を進められると考えられる案をコーディネーターとしてまず提示する。それに基づいて『参加者の意見を反映して進める』 というやり方をとっている。そうすることで、全参加者がゼロから勉強してスキームを構築していくのではなく、コーディネーターの経験を踏み台にして積み上 げていく方法を取ることができる。(従来コーポラティブでは当然と考えられてきた)直接的な討議は一切行わないで参加者から提案があるときはすべてコー ディネーターにぶつける。」

「よい提案であれば、コーディネーターがそれを全参加者に改めて提案し、参加者の了解を踏まえたうえで事業に反映していく。他の参加者の不利益 や将来的なトラブルにつながると考えられるものについては、その旨をコーディネーターと提案者が納得するまで話し合い、納得に至った場合にその経緯を匿名 で全参加者に報告する」

「参加者全員が共有すべきは、どんな意見があり、どう説明されたかという事実であって、誰が意見を言ったかではない。こうすることで『(意見の 提案者が)細かい人』と思われる心配もなく何回でも質問することができ、内容がコーディネーターから参加者に告知されることで理解内容を全員で共有でき る」

「(コーディネーターが発信する)広報はすべてメールなどで行うため、時間配分に応じて読むことができるし、自らが提案した内容も正確に広報さ れているかチェックできる。必要であれば、提案内容を整理して参加者に多数決を仰ぐこともできる。参加者に求められる手間は、広報物に目を通すことだけ。 これだけで議論を十分積み上げていくことができる。コーディネーターは”ティーチャー"ではなく、あくまでもコーディネーター(調整役)。それに徹するこ とでこそ円滑な事業運営が可能となる」

■自由設計への考え

「設計図は平面図だけではなく、壁面の形状を表した展開図や仕様表、設備図といった具合に複数の図面で表現されるし、それらはすべてモノクロであるため、 専門家でなければ図面だけから正確に空間の具体的なイメージを持つことは不可能に近い。設計者のスケッチパースは演出意図が過剰に表現される傾向があり、 完成した際にイメージした演出と異なっていても、修整するには時間と費用がかかり、品質も低下する。そこで、設計内容が最終案に近づいてきた時点で各住戸 ごとにCGを作成し、イメージと合致しているか確認する」

「この時点でイメージと異なる場合は、設計変更を行うが、すでに工事がすんでしまった場合(の変更)と異なり、無駄なコストはかからず、品質低下にもつながらない。工事環境を整えることが(施工の)監理を向上させ、良質な品質の建物づくりにつながる」

「メンテナンス性に問題があると考えられるもの、評価が確定していない新商品や新工法は基本的に採用せず、建物(野維持管理)が安価に長持ちす ることを前提に考えることが重要。集合住宅の社会性(都市を形づくる1つのインフラとしての性質)を踏まえ、特に共用部に関しては、デザイン性よりもメン テナンス性を重視した設計を行う(社会インフラとしての耐久性の確保=丈夫で長持ちし環境にも優しい住宅づくり)」

コーディネーター選びは・・・
      ・・・責任と「覚悟」をもって

自由設計ができるコーポラティブ住宅でも、もちろんそれが際限なくできるわけではない。当然ながら、拠出できる予算などを考慮しながら計画すること が重要になってくる。ほうっておけば、知らぬ間に資金が膨らんだということも起こりえるからだ。だからこそコーディネーターの役割が重要になる。

コーディネーターは建築や空間設計のプロであるばかりか、事業が成功するために全体の収支・採算を見極めて計画を進行していく役割を担っているた め、ローン計画などの資金プランづくりや税制などにも通じているうえ、それらに詳しい専門家などとのネットワークをもっているケースが多い。その面でも 「プロ」として助言する立場にあるからだ。

つまり、そうした能力を備えているコーディネーターであるかどうかを見極めることが参加者には求められるわけだが、その見極めの手段としてまず考えられるのがコーディネーターのそれまでの実績を見ることだ。

それによって、どれだけのことを期待でき、どれだけ任せられるかといったコーディネーターの質・レベルをある程度つかめるし、どれだけ真摯に情報開示に応じるかによって、事業者としての社会的な姿勢と責任感もつかむことができる。

もちろん、コーディネーターがコーポラティブ事業に取り組むのは初めてというケースもある。その場合も含め、計画を進める際の姿勢から判断すること も大きな手がかりになりえる。橋から自分の意見を押し通そうとするコーディネーターや、参加者の意見を一から十まで取り入れることに終始するコーディネー ターは避けたほうが無難だ。

前者は、設計の専門家であることを自信に、自分の描いた”理想”をコーポラティブを借りて実現しようとするきらいがあるし、後者は逆に参加者が満足 すればそれだけで事業が円滑に運ぶと思っている「ひと任せ的」な傾向が見え隠れする。この場合、前者を、参加者不在の「自己満足型」、後者をすべてを押し つけるだけの「参加者依拠型」あるいは「放任型」と呼ぶ専門かもいる。

政治学者、竹井隆人氏は、「デザイナー(建築家・設計家)が始めるから、日本のコーポラティブではそうした問題が起こりがち」だとし たうえで、特に後者について「完全な責任放棄」だと言い切り、どちらにしても「結局、余計なモノを追加したりして価格が高くなってしまう」と指摘する。
こうしたことから、コーポラティブの第一歩は、コーディネーター選びからといっても過言ではないだろう。

しかし、熟練し信頼できるコーディネーターがあったとしても、任せきりにしてはいけない。自分にあった住まいをつくるということは、取りも直さず自 身の責任の範囲内でできることをしていく自立した行為であるからだ。その覚悟が必要なのは言うまでもない。それがあってこそ、資金計画でつまづくこともな いし、本当に納得できる住まいづくりができる。

事業参加に向けて・・・要諦は「長短所の見極め」

コーポラティブで「本当の満足」を得るために

コーポラティブには、メリットも多いが、やり方次第ではそれがデメリットへと転化してしまう可能性が多分にある。逆にいえば、デメリットをメリット に変えてしまえば、非常に有効な住宅取得・供給手段になり得る。それには、まずそれらを理解したうえで事業に参加することが重要になる。

自由設計で”納得”  資金フローも格段に透明化

―メリット―

■「自由設計」

コーポラティブ住宅の最大のメリットの1つとして上げられるのが、「自由設計ができる」という点だ。コーポラティブ参加者(入居者)は、自身が描く現在・将来のライフスタイルのあり方を想像、それにあわせて主に内部空間を形づくっていく。

現在普及しはじめてきた専用住戸自由設計対応の分譲マンションは着工後に販売しているため、躯体自体をいじったり、設備メーカーを変えるような設計 変更などに対応し切れないといった制限がつくが、コーポラティブでは住戸単位で対応が可能だ。着工前の設計段階の変更であれば、そうした問題は霧散する。

さらに、「工事中に変更を行うため、間違いが生じたり工事の品質低下につながるのでは」「請負契約後の変更でその分のコストが定価ベースでほぼまる まる純増となるのでは」といった懸念に対しても、①着工前に設計完了するため、間違いが生じないよう監理を徹底しさえすれば品質低下を防げるし、逆に品質 向上につながる②設計変更後の請負契約なので、変更コストは発注価格ベースでの差額だけ―など不具合はない。

■「納得の価格」

分譲マンションでは通常、現地以外の場所でモデルルームを開設するが、その経費は数千万にのぼる。実際に建つ建物とは関係ないばかりか、販売終了後は解体 撤去破棄されるので撤去コストもかかる。これにテレビCMなど大量の広告を打てばどうか。「あの手この手で売ろうとするあまり、販売経費がますますかさむ 傾向にある」という。

デベロッパーの利益が最低でも事業費の10%確保できなければ、その事業に対する与信が得られず、金融機関から融資を受けることができないという事 情もあり、利益の確保が事業成立の前提になる。土地代と再販価格は市場で決定するため、結局は利益と販売経費を確保したうえで、残りの額で事業を組み立て ていかざるを得ない。

これに対して、土地代、建築費、設計費など、建てるのに必要な費用の積み上げだけで事業を組み立てていくというのがコーポラティブハウスの基本的な事業化コストに対する考え方だ。

そこに居住しようという人が集まって、自分たちが居住するための家をつくる―そこには余分な販売宣伝費やデベロッパー利益などは発生しないし、入居者が主体となって工事や材料などすべてを発注するので資金フローが格段に透明化。このため価格形成にも納得できるようになる。

ただし、入居者は専門家ではない。契約行為や事業キャッシュフローの組み立てなど専門的知識を必要とする業務の実行には、それらの業務に通じた専門家の関与が不可欠になる。多くのコーポラティブの事業化例でコーディネーターが活躍するのは、このためだ。

■「コミュニティ形成」

マンションは引渡しが終わると区分所有者による管理組合が維持管理運営をしていかなければならないが、建物自体はメンテナンスフリーでは決してなく、10数年周期で修繕をしていかなければ良好な状況を維持し、長持ちさせることはできない。

しかし通常のマンションでは一般的に、当事者意識が希薄になりがちで、維持管理に最も重要であるべきコミュニティの不足が潜在的問題として以前から 指摘され続けている。さらに、大規模修繕など高額の費用出費に対する合意形成が極めて困難で、それは阪神大震災の被災マンション復旧の際に大きくクローズ アップされた。

コーポラティブの利点は、計画・建設段階から将来の入居者が事業参加者として、全員が当事者意識を持つとができるので、維持管理運営での合意形成を円滑に行えるようになる点にある。つまりコミュニティの事前形成だ。

自ら関与してつくりあげたマンションだけに、大事にしようという気持ちが働くし、愛着が強い分、部外者の侵入に対しての意識が働くため、ソフト面で のセキュリティー効果も大きい。警察庁の報告などでも「侵入者は人の目を最もこわがる」ことがわかっており、実際それが防犯にも大きな威力を発揮してい る。

「直接的な討議」は有効?

―デメリット―

■「合意形成の難しさ」

コーポラティブが持つメリットが、そのままデメリットになるケースがあるという場合も考えられる。その1つが「合意形成」。それまで見知らぬ者が多数集 まった場合などは、集会を重ねるうち、ときには収拾がつかなくなって計画そのものが流れたりすることもあるという。そうなれば、メリットの1つでもある良 好なコミュニティ形成以前の話になってしまう。

つまりメリットを生むはずの「直接的な討議」がデメリットを内包しているとみる関係者も少なくはない。

例えば、参加者間に対立が生じた場合、一方が妥協すると、意見が通った参加者は自分が正しかったと考える。次に対立が生じた場合、前回妥協した 参加者は今回こそは受け入れて欲しいと当然考えるが、前回意見が通った参加者は、「自分が正しかった」と考えているので、今回も自分の意見を採用すべきだ と主張する。論点のずれた意見にふり回され、議論が収束しなかったり、いったん結論が出ても、納得しない参加者の発言で振り出しに戻ってしまうこともあ る。これでは、「仲良くなる以上に、決定的な人間関係の溝をつくりかねない」という。

コミュニティ形成に「直接的討議」が必ずしも有効に働くわけではない。そのことを踏まえたうえで有効な手段も検討する必要がある。

2013年11月12日火曜日

内淡路町ハウス


大阪市中央区内淡路町で進めていたコーポラティブハウス、「内淡路町ハウス」が竣工しました。



大阪市中央区(旧東区)は、古くから大阪城の城下町として繁栄してきた地域。印刷会社の自社ビルとして建設された従前ビルは築40年を経て老朽化が進んでいました。


近年印刷業の業態変化により、自社ビル内で印刷する事はなくなり、かつて印刷機器の置かれていた多くのスペースが空いていましたが、自社ビルとして利用する前提で建設された建物は第三者にスペースを貸与することができるプランになっておらず、建物は早急にメンテナンスを要する状況でしたが資金投下しても企業収益に結び付かないので先送りにされており、最上階のオーナー住戸も老朽化が進んでいました。

本事業では、立体買換えの特例を用いてコーポラティブ方式による建替えを行い、従前ビル所有者は資金投下をせずに印刷会社として必要なスペースを最新スペックの事務所・倉庫として確保、余剰スペースは賃貸住戸として収益を生むストックに変換、最上階にバリアフリーのオーナー住戸を計画しました。

建物は純ラーメン構造で計画し、事業参加者の希望に応じて専有面積調整を行い、個々のライフスタイルや趣味嗜好、予算に応じた住まいを実現しました。そのバリエーションの豊かさは妻面の外観にも現れており、マッシブな外観に変化を与えています。


こちらで竣工写真を見ることができます⇒http://www.cube-3.co.jp/c-uchiawaji.htm

2013年10月31日木曜日

ペイサージュ宝塚寿楽荘

宝塚寿楽荘コーポラティブハウスとして進めていたプロジェクトが、「ペイサージュ宝塚寿楽荘」として竣工しました。



計画地は閑静な邸宅地として知られる宝塚寿楽荘。大正の時代から別荘地として開かれ、昭和初期に高級住宅用地として分譲されるなど、邸宅地として格調高い生活文化が今なお受け継がれる地域です。
この街で見られる邸宅には、かつての職人の技量の高さをしのばせる地域の財産とも言える、見事な石積み擁壁や植栽などが施され、古くからの邸宅地の面影を今に残しています。

昨今、緑を伐採し石積擁壁を撤去して画一的な住宅地が分譲されていく中、本プロジェクトは石積擁壁や木々の緑を生かし、趣と品格を継承する環境共生型住宅として計画しました。

従前家屋が建っていた宅盤と前面道路に5m程度の高低差があり、この高低差を利用し、地下1階に駐車場とエントランスホールを計画。この高低差部分に施されていた緑と石積み擁壁を出来る限り残すことで、歴史に培われてきた魅力的な寿楽荘の環境に寄与する事を期待しています。



従前の邸宅に置かれていたオブジェをエントランスに設置しました。

 

様々なオリジナルな住まいが実現しました。


周囲を囲む緑が様々な所から飛び込んできます。



従前の邸宅で使われていたアンティックなシャンデリアも再利用しました。


腰かけることのできる和室です。


2013年9月30日月曜日

コーポラティブハウスのデメリット・問題点について

近年、コーポラティブハウスについてメディアなどで話題になることも多くなったことで、様々な情報等がネットで紹介されています。しかし、中には不正確なものも少なく無く、かえって誤解を助長させる懸念のある情報もあるようです。実際にコーポラティブハウスの事業に関わっている者の眼から、出来る限り客観的に正確な情報をお伝えしておきたいと思います。

○瑕疵担保責任についての問題


 コーポラティブハウスは、基本的に建設組合が直接設計事務所に設計を発注し、直接建設会社に工事を発注して建物を建設します。従って、設計事務所と建設組合は直接業務委託契約を、建設会社と建設組合は直接工事請負契約を締結します。問題が発生した際の責任や補償に関しては、各契約書で明文化することにより明確にすることが可能です。
平成21年10月1日より、住宅瑕疵担保履行法がスタートし、新築住宅を建設する事業者に対して、瑕疵の補修等が確実に行われるよう、保険や供託を義務付けられるようになりました。これは、直接工事請負契約を締結する建設会社に対しても義務付けられており、万が一、事業者が倒産した場合等でも、2000万円までの補修費用の支払いが保険法人から受けられるようになっています。

○流動性が著しく低い

コーポラティブハウスは完成してしまうと区分所有登記され、一般的な分譲マンションと基本的には全く同じ所有形態となります。従って、一般的な分譲マンションと同様に中古流通市場で売買することができます。最近の傾向では個性的な住まいを希望される方が多くなってきており、一般的な分譲マンションの中古流通相場価格よりも高い評価で取引される事例も少なくありません。

○コストは安くない

コーポラティブハウスが割安であると言われるのは、分譲集合住宅事業の収支内訳において大きな割合を占めるディベロパー利益(価格の約10%程度)や販売経費(モデルルーム関連コスト、膨大な広告宣伝費)を削減でき、原価の積み上げで事業を組み立てることができるからです。
大量生産型の一般的な分譲マンションと比較すると、確かに規模が小さかったり自由設計対応を行うことで工事費や設計費は割高になり、コーディネイト費もかかりますが、上記事業フレームの差異により、同一仕様で比較した場合、取得費用総額を一般的な分譲マンションよりも安く抑えることが可能となります。もちろん、個別設計において仕様を上げていけばその分の費用は上乗せされるので、単純に安いというわけではありません。
管理会社は一般の分譲マンションのようにディベロッパー系列の管理会社が予め設定されているわけではなく、建設組合がコンペで選ぶなど競争原理を導入する等の工夫により、管理費の世帯あたりの負担を一般的な分譲マンションよりもむしろ低く抑えている事例も少なくなく、高くつく傾向があるとは言えません。保険に関しては、コーポラティブハウスと一般的な分譲マンションの間に差異はありません。

○脱退コストが高い

コーポラティブハウスは建設組合が主体的に事業を進めていくという事業の性格上、事業進捗中の事業の安定性を図る為に事業中の脱退を様々な形で規制しているものも少なくありません。しかし、一旦完成してしまうと、所有形態は一般の分譲マンションと全く同じなので、一般の分譲マンションと比較して流動性が低いという事は無く、基本的に自由に売却する事も可能です。従って、特に脱退コストが高いという事はありません。

○人間関係は難しい

一般の分譲マンションでも、生活時間の違い等に起因する騒音の問題等が発生する事がありますが、お互いに少しの気遣いと理解によって解消されるものも少なくありません。しかし、一般の分譲マンションでは、住民間のコミュニティはほとんど存在せず、会話する機会も得られずに問題が大きくなりがちです。しかし、コーポラティブハウスは事業を通じて住民同士が話し合いをする土壌を形成しているので、会話を通じて問題解決できる可能性が高くなります。
基本的にすべての分譲マンションは、長い年月の間にメンテナンスをしていく必要があり、メンテナンスを行う主体は管理組合です。管理組合を正常に機能させるには、住民間の良好なコミュニティが不可欠です。 しかし、多くの分譲マンションでは住民間のコミュニティがほとんど存在せず、結果として本来管理組合として主体的に検討・判断すべき事項も全て管理会社に丸投げしている管理組合も少なくありません。そうなると、本来クライアントである管理組合が、受託業者である管理会社にコントロールされる状況になってしまいます。実はこのような状況になってしまっている分譲マンションは少なくありません。
分譲マンションのメンテナンスは基本的に住民が毎月積み立てる修繕維持積立金によって行います。大規模な分譲マンションともなると、メンテナンスコストは数億円にのぼります。それだけの巨額の現金の運用を、まともに監視もせずに営利企業である管理会社に丸投げしている状況は異常です。この状況を正常にするためには、管理組合を正しく機能させ、管理組合が管理会社をコントロールする状況に変えるしかありません。その為には住民間のコミュニティ形成が必要不可欠です。
分譲マンションの区分所有者は、マンションの維持管理運営において必然的に運命共同体であり、法律的に誰も完全に部外者でいることはできません。完全に他者と関係を絶ちたければ戸建住宅に住むしかありませんが、それでも近隣住民や地域と無関係ではいられません。むしろ、それが煩わしいのでマンションを選択する方も少なくないと思います。
人は皆、社会的存在であって他者から切り離れて存在することは不可能です。この前提に立ち、本質的に自立した存在になろうと考えると、コーポラティブハウスの意義が見えてくるのではないかと思います。

コーポラティブハウスは一般の分譲マンションと異なる為、事業参加を検討する際には様々な情報を収集されることと思います。しかし、収集される情報は玉石混交で、正確な情報もあれば、全く勘違いな情報など様々で、これを取捨選択するには相当高い情報リテラシーが必要です。本当はどうなのか知るには、当該事業のコーディネイターに直接ヒアリングするのが一番ですが、私たちはこのブログ等を通じて出来る限り情報を提供し、正しい判断をしていただく一助となるように努力していきたいと考えています。

2013年6月19日水曜日

街なか居住のすすめ:17

「街なか居住のすすめ」を16回にわたって連載してきましたが、果たして街なか居住は住む人にとって魅力があるのでしょうか?
日本の街なかは、世界でも最も人口密度が高いと言われてきましたし、私たちもそうだと思ってきました。しかし、その実態はある意味正しく、ある意味正しくありません。



これは、約20年近く前に、あるシンクタンクがまとめた人口密度と圏域距離の相関図です。
この図を見ると、東京の都心4区の人口密度は、ほぼ同面積のマンハッタンやパリ市よりも大幅に低く、その外周圏域の人口密度は、逆に東京圏よりもニューヨーク都市圏やパリ首都圏の方が低くなり、東京では周辺部から都心部に通勤している状況が確認できます。
昼夜間人口比も、東京都心4区では6.2、マンハッタンでは2.3、パリ市では1.4と、東京が突出して昼間人口に対して夜間人口が少なく、この状況を裏付けています。

東京都心部に、かなりの人口流入がおこっておりますが、大きく見ると、約20年前のこの状況が変わるほどには至っていないのが現状ではないかと思います。

このように、広域で考えると東京の人口密度は非常に高いものの、都心部だけを見ると、世界の大都市に比べて人口密度は低いという事がわかります。マンハッタンやパリに行くと、都心部に多くの人々が居住していることが実感できます。そして、都市としての歴史の中で、これだけの人口密度を支えつつ、快適に暮らすことのできる文化が成熟している事を実感します。日本の街なか居住は、まだその魅力を十分に感じることができない段階なのかもしれません。

高度経済成長時代、都市への急速な人口流入に伴い、街なかの住環境は急激に悪化しました。それを解消するための方法として、街なかを高度利用する方向ではなく、公共交通機関を整え、通勤する方法で住環境の改善が図られました。

そのことにより、今でも私たち日本人は郊外に住んで街なかに通勤するのがあたりまえであり、街なかに居住するというのは特殊であるというような感覚を持っています。しかし、日本は伝統的に人口密度の高い都市において、すぐれた住環境を確保してきた歴史を持つ国です。明治維新以前の江戸や京都は世界最大でかつ最高密度の都市であり、その都市では多くの市民が居住し、働いており、さらに来日した外国人が目を見張るほど、良好な住環境を整えていました。むしろ、郊外から通勤する職住分離のライフスタイルの方が、近代以後に定着したものであり、本来私たち日本人が長い時間をかけて継承・熟成してきたものでは無いのです。

私自身、兵庫県の県庁所在地である三宮のターミナル駅から徒歩圏で計画したコーポラティブハウス、アンビエンテ北野に約10年近く住み、働いてみ て、街なか居住の魅力を実感しています。日本では、まだ多くの人が、郊外住宅地に住んで公共交通機関を利用して通勤するのがあたりまえだと考えていると思い ますが、実際に街なか居住をして感じた魅力を少しでもお伝えする事ができればと思います。

アンビエンテ北野


何が魅力か?
一言で言えば日々の生活が楽しいということです。
この楽しさは、一度でも街なか居住をしてみないと、なかなか実感できないものかもしれません。


まず、徒歩圏内においしいレストランや、洒落たバーが無数にあります。
おそらく、人生の中ですべての店を回りきることは不可能でしょう。
ミシュランに掲載されている店だけでも20件以上あります。
食事に行って、お酒を飲んでも、家まで歩いて帰ることができます。
街なか居住を経験してから住宅地に住んだことがあるのですが、あまりに楽しくないのに驚きました。
家族で食事に行くにしても、車で行くとなると飲酒はできません。
なかなか家族で電車に乗ってまで食事に行く気がしません。
結果、都心居住していた頃は頻繁に行っていた、家族で外食する事はほとんどなくなりました。
その頃から、もう一度街なかに居住したいとう思いが募り、アンビエンテ北野に取り組む際の原動力になりました。

街なか居住は買い物や通学、通勤に便利なのはもちろん。
人生で移動に費やす時間を大幅に減らすことができ、その時間を余暇に回すことができます。
徒歩圏にジムや映画館もたくさんあり、少しでも時間ができた時に気軽に利用する事ができます。
図書館や美術館、博物館等、様々な文化施設等に行く頻度も高まっています。

住んでみて意外だったのが、とても静かであることです。
アンビエンテ北野は、北野町の高台に位置するので窓から三宮の街並みが一望できるのですが、街の喧噪が一切聞こえません。おそらく暗騒音は高いと思うのですが、暗騒音のマスキング効果かどうかわかりませんが、夜になっても街の喧騒が全く聞こえません。住宅地に住んでいた時に聞こえた、遠くで鳴る救急車等のサイレンの音も聞こえません。

ある程度の喧騒は覚悟していたので、これは非常に意外でした。
逆に、山が近いので、朝は野鳥の声が街を覆います。
最初はどこかで野鳥の声を録音して放送しているのかと感じたぐらいです。
実は、本当に野鳥が住まいの周りまで来ていました。
これほど自然を身近に感じることができるとは、全く期待しておりませんでした。

また、地域活動が活発である事にも驚きました。
神戸は明治の開港以後開けた、150年程度の歴史の街ですが、北野・山本地区という異人館街の住民は土着性が高く、戦前から住まれている方も大勢おられることを知りました。
神戸の住宅地は基本的に戦後発展した所が多く、住宅地に住んでいる時にはマンション等に住む新しい住民ばかりが見えていたのですが、街なかに住むと、長らくこの町に住まれている方々とのつながりがたくさん生まれました。大都市の中心地なのに、まるで田舎に引っ越してきたかのようなこの感覚は、全く期待していたかったものですが、とても住み心地のよいものだと感じています。

明治の開港以後開けた街で、元々住まれていた方がほとんどおられなかったという事もあるのでしょう、住まれている方々が社交的で明るいのも特徴的です。外国人も非常に多く、神戸に土着化している外国人も多いので、多様性があたりまえのような感覚があります。地域内に神社やお寺だけでなく、イスラム教会、ユダヤ教会、カトリック教会、バプテスト教会、東方正教会、ジャイナ教会他、様々な宗教施設が仲良く共存しています。この事が、この地域への外国人の土着化を促進しているのかもしれません。

外国人だけでなく、日本人も含めてライフスタイルも多種多様です。新興住宅地では、大企業会社員等、偏った属性の人々が集まる傾向があります。一気に街ができることで入居者の世代も偏り、結果として居住者とともに街が老いていくような状況が生まれます。しかし、街なかには様々な世代、様々な仕事をしている方々が住んでいます。この事で生まれる多様性も、他者を受け入れるおおらかな価値観に繋がっているのかもしれません。

さらに、どこに行くにしても交通利便性は至便です。
新幹線の新神戸駅にも歩いていく事ができます。
三宮駅には、JR、阪神、阪急、山陽、地下鉄様々な電車が乗り入れています。
神戸空港も近く、車で行っても2日間無料の駐車場が便利です。
阪神高速道路にも近く、新神戸トンネルを経由すれば山陽道や中国道にも出る事ができます。
これ以上、求めようが無いほど利便性に恵まれており、行き先に応じて選択することができます。

夜でも人が出歩いているので怖くありません。

女性の一人歩きも全然大丈夫です。
むしろ、住宅地の方が、夜になると道から人がいなくなるので怖いと思います。
セコム等セキュリティ会社に入っている家も多いので、警備員が巡回しており、何かあるとすぐに飛んできてくれるのも安心です。

大人の目にさらされるからでしょうか、夜のコンビニで子供を見かけることもありません。
いわゆる繁華街の中であれば別でしょうが、繁華街以外では、健全な環境が保たれているように思います。


また、驚くほど山にも近いです。
北野町の登山口に足を踏み入れると、途端に峡谷になります。
登山道を経由して、布引の滝や市章山・錨山、様々な所に行く事ができます。
まさか、こんな街なかに住みながら、徒歩でハイキングに行く事ができるとは思っていませんでした。

私はこの街に住んで、本当によかったと感じています。
キューブでは、今後とも継続して、この地域でコーポラティブハウスを事業化したいと考えています。
現在も、アンビエンテ北野、ル・パッサージュ北野につぐ、第三弾目となるコーポラティブハウス、神戸北野山本通コーポラティブハウスⅡの参加者を募集しています。

街なかに住むのは本当に楽しいです。
この楽しさを、もっと多くの方々にも知って頂きたいと考えています。

是非、街なか居住を一度経験してみてください。
今後もキューブは街なかでの事業化にこだわり続けます。