2012年6月13日水曜日

スケルトン定借事業の実例(宇多野CH:3)

参加者募集説明会で行ったプレゼンテーションを紹介いたします。

計画地は、周辺に仁和寺や龍安寺のある、まさに歴史文化の中心と言えるような立地です。

説明会は仁和寺の中にある、仁和寺御室会館を中心に行いました。
計画地は説明会場から西に歩いた所で、周辺には様々な生活利便施設が点在しています。
説明会の後、計画地まで徒歩で案内しましたが、御室から福王子にかけては緑豊かな閑静な住宅地が広がっており、説明会に参加された方々に環境の良さを実感していただきました。

本事業のコンセプトは、環境共生です。

現在起こっている環境問題の多くが、私たちの暮らしと密接に関わっています。
地球温暖化、資源の枯渇、風土の消滅、まちなみ、コミュニティーの消失、室内空気汚染 etc.
様々な問題が指摘されています。
これらの問題に、暮らしと住まいからのアプローチで解決しようと、環境共生住宅が考えられています。

環境共生住宅に関しては、「一般社団法人 環境共生住宅推進協議会」が作られています。
http://www.kkj.or.jp/
本プロジェクトは、環境共生住宅として提案されている内容に沿って、できる限り具体的な形で事業に反映させるように取り組みました。


環境共生住宅に向けて、3つの理念が提案されています。

まず、地球環境の問題に寄与する理念として2つ。

一つは LOW INPACT として地球環境にやさしい家づくり。
これは地球温暖化の防止に向けて、省エネルギーや自然、未利用エネルギー利用を進めていこうというものです。そして、資源枯渇の防止に向けて、自然の有効活用や長期利用、メンテナンスを進めていこうというものです。

もう一つは High Contact として、まわりの環境と親しむ住まい方。
これは風土を継承し、地域に親和した住環境を形成していこうというもの。そして周辺との親和に配慮し、住宅内⇔外部⇔まちなみへの連関性に配慮していこうというものです。

さらに、居住環境問題の解決に寄与する理念として1つ。

Health & Amenity として、健康で快適な住まい。
健康・快適性を重視し、安心・安全を考えていこうというもの。そして、より質の高い住宅の供給を通じて、自然・周辺環境との調和、景観配慮を目指そうというものです。


以上、各理念について、より詳しく見てみます。

一つめの理念、LOW INPACT 地球環境にやさしい家づくりについて。
具体的には家のライフサイクルに着目しています。

家のライフサイクルは
⇒計画⇒建設⇒居住⇒改修⇒破棄⇒計画⇒建設⇒居住⇒
というように循環しています。
それぞれの段階において、環境共生に繋がる方法が考えられます。

計画段階では、自然への影響を考える。
地形の保存や生態系の保全。緑の保全などが考えられます。

建設段階では、建設エネルギーを減らす。
生産エネルギーの小さい建材の採用。リサイクル材料の使用。長寿命のための工法・施工の工夫などが上げられます。

居住段階では、省エネルギーな暮らし方。
季節を意識したライフサイクルや、自然エネルギーの効率的利用などが考えられます。

改修段階では、維持管理しやすい構造。
補修しやすい材料・工法。間取り変更のしやすい構造。セルフメンテナンスの努力などが上げられます。

廃棄段階では、廃棄物を減らす。
リユース、リサイクル。廃棄処理のしやすい建材を選ぶことなどが考えられます。


宇多野コーポラティブハウスでは、これら各段階に応じて、具体的に対応しております。

計画段階の、自然への影響を考える。
一団地申請により建物を分棟化。
従前の地形を保存し、それを生かした計画を行うことで、既存樹木をできるだけ生かし、生態系と緑の保全を図っています。

建設段階の、建設エネルギーを減らす。
生産エネルギーの小さい木造を採用。長期優良住宅の基準に沿った設計を行うことで、建物の安全性を確保しています。

居住段階の、省エネルギーな暮らし方。
長期優良住宅の仕様を前提とし、高気密高断熱な住まいを実現しています。

改修段階の、維持管理しやすい構造。
共用設備の維持管理しやすいテラスハウス形式で、木造軸組構造を採用。委託管理を行い、長期利用に必要な維持管理運営の実施できる環境を整えています。

廃棄段階の、廃棄物を減らす。
安心で快適な60年間の利用を実現するスケルトン定借を採用。廃棄処理のしやすい木造を採用しています。


スケルトン定借とは、修繕や建替えの話に煩わされることなく、60年間の長期にわたり安心で快適な住宅を使うことができる権利(利用権)を安価に取得できる仕組みです。
スケルトン定借に関連して、優れた業績に対して数多くの表彰がされています。
本事業では、このスケルトン定借を全面的に採用しています。



宇多野コーポラティブハウスでは、共用設備の維持管理しやすいテラスハウス形式を採用しています。宇多野コーポラティブハウスでは、従来のテラスハウスがもっている問題を解決する為に、3つの工夫を採用しています。


1つは、長期耐久性を持つ構造を採用しています。
長期有優良住宅の基準を満たすことで、長期耐久性を確保しています。


もう一つは、住戸ごとに独立した計画を行っています。
隣戸間にも柱2本、壁2枚の計画とし、遮音性の確保に努め、住戸の独立性を高めています。
また、隣接住戸間などに窓など開口部がないため、開口部を経由した音の伝達が低減される計画としています。

3つめは、集合住宅として委託管理を行い、長期利用に必要な維持管理運営を行っている事です。管理会社への委託管理により、客観的な第三者の専門家を介在させることができるように配慮しています。


2つめの理念、High Contact まわりの環境と親しむ住まい方について。
大きく2つの考え方を導入しています。
まず1つは、周辺の歴史的風致と共生する、伝統的デザインコードを取り入れた和風外観の採用です。
地域のまちなみに溶け込む低層接地型で分棟化。
瓦屋根の採用や外壁の色彩など、京都宇多野・福王子という歴史的風致と共生することを目的に計画しています。


もう1つは、周辺とのつながり方。
宇多野コーポラティブハウスは、アプローチ形状がもたらす心理的バリアにより、街区のセキュリティーを確保しつつ、地域にやさしく開かれる計画としています。
旗竿形敷地という、敷地の特性を生かした動線計画とすることで、自然と地域になじみ、且つセキュリティーを兼ね備えた配置計画としています。


最後の理念である、Health & Amenity 健康で快適な住まいについて。
これには4つのアプローチをしています。
まず1つめ。住戸ごとに独立した計画により、住戸の独立性を向上しています。
隣戸間にも柱2本、壁2枚の計画とし、遮音性能の確保に努め独立性を向上、隣接住戸間に窓など開口部を設けずに開口部を経由した音の伝達を提言、マンションのように上下階に他人住戸がなく、分棟化を図ることで、より独立性を高める工夫を行っています。



2つめに、各分譲住戸に専用庭を配置しています。
テラスハウス形式を採用することで各住戸に専用庭を確保。既存樹木をできる限り残す計画で、緑豊かな環境の専用庭を実現しています。




3つめには住宅性能表示の基準に沿った設計。
実は募集時点ではこのような説明をしておりましたが、その後本事業が長期優良住宅先導的モデル事業に採択され、長期優良住宅の制度もはじまった事を受け、長期優良住宅の基準に沿った設計を行いました。

4つめには管理会社による良好な管理環境の維持を目指しました。
委託管理により、管理に関して常に客観的な第三者の専門家が介在するように配慮しました。
また、管理会社の選定については、会社の信頼度、価格の適正さを考慮した上で、建設組合員の投票で決定しました。

募集時点の標準住戸プランはこのようなものです。
広さなどのイメージが掴みやすいように、一般的な分譲住宅のような間取りで設定しています。
実際は、個々のライフスタイルに応じて設計を行いますので、標準住戸プランの原型は全く残らない、全く異なる間取りとなりました。


標準プランを元に作成した内観パースです。


緑に囲まれたライフスタイルがイメージできるように作りました。


そして、個々の希望に応じて、各住戸の計画が進められました。
当初の標準プランからは間取りも仕上げも全く異なり、内観パースのイメージもそれぞれです。

こちらの住まいは、大量に書籍を所有されているご家族で、図書館の中に住むようなイメージの住まいを計画されました。

こちらは、森の中に住むようなイメージを希望され、トップライトからも木漏れ日が注ぎ込むようなリビングを計画されました。



こちらは土間キッチン・ダイニングにつながるリビングを中心に、佇む場所によって景色が変わり、吹抜けを通じて空間が連続しお互いを感じることができる住まいを計画されました。


スケルトン定借住宅を中心とした新しい住宅によるまちづくりを支援していくことを目的として、1998年7月6日に「スケルトン定借普及センター」が設立されています。
http://www.skeleton.gr.jp/









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