2013年9月30日月曜日

コーポラティブハウスのデメリット・問題点について

近年、コーポラティブハウスについてメディアなどで話題になることも多くなったことで、様々な情報等がネットで紹介されています。しかし、中には不正確なものも少なく無く、かえって誤解を助長させる懸念のある情報もあるようです。実際にコーポラティブハウスの事業に関わっている者の眼から、出来る限り客観的に正確な情報をお伝えしておきたいと思います。

○瑕疵担保責任についての問題


 コーポラティブハウスは、基本的に建設組合が直接設計事務所に設計を発注し、直接建設会社に工事を発注して建物を建設します。従って、設計事務所と建設組合は直接業務委託契約を、建設会社と建設組合は直接工事請負契約を締結します。問題が発生した際の責任や補償に関しては、各契約書で明文化することにより明確にすることが可能です。
平成21年10月1日より、住宅瑕疵担保履行法がスタートし、新築住宅を建設する事業者に対して、瑕疵の補修等が確実に行われるよう、保険や供託を義務付けられるようになりました。これは、直接工事請負契約を締結する建設会社に対しても義務付けられており、万が一、事業者が倒産した場合等でも、2000万円までの補修費用の支払いが保険法人から受けられるようになっています。

○流動性が著しく低い

コーポラティブハウスは完成してしまうと区分所有登記され、一般的な分譲マンションと基本的には全く同じ所有形態となります。従って、一般的な分譲マンションと同様に中古流通市場で売買することができます。最近の傾向では個性的な住まいを希望される方が多くなってきており、一般的な分譲マンションの中古流通相場価格よりも高い評価で取引される事例も少なくありません。

○コストは安くない

コーポラティブハウスが割安であると言われるのは、分譲集合住宅事業の収支内訳において大きな割合を占めるディベロパー利益(価格の約10%程度)や販売経費(モデルルーム関連コスト、膨大な広告宣伝費)を削減でき、原価の積み上げで事業を組み立てることができるからです。
大量生産型の一般的な分譲マンションと比較すると、確かに規模が小さかったり自由設計対応を行うことで工事費や設計費は割高になり、コーディネイト費もかかりますが、上記事業フレームの差異により、同一仕様で比較した場合、取得費用総額を一般的な分譲マンションよりも安く抑えることが可能となります。もちろん、個別設計において仕様を上げていけばその分の費用は上乗せされるので、単純に安いというわけではありません。
管理会社は一般の分譲マンションのようにディベロッパー系列の管理会社が予め設定されているわけではなく、建設組合がコンペで選ぶなど競争原理を導入する等の工夫により、管理費の世帯あたりの負担を一般的な分譲マンションよりもむしろ低く抑えている事例も少なくなく、高くつく傾向があるとは言えません。保険に関しては、コーポラティブハウスと一般的な分譲マンションの間に差異はありません。

○脱退コストが高い

コーポラティブハウスは建設組合が主体的に事業を進めていくという事業の性格上、事業進捗中の事業の安定性を図る為に事業中の脱退を様々な形で規制しているものも少なくありません。しかし、一旦完成してしまうと、所有形態は一般の分譲マンションと全く同じなので、一般の分譲マンションと比較して流動性が低いという事は無く、基本的に自由に売却する事も可能です。従って、特に脱退コストが高いという事はありません。

○人間関係は難しい

一般の分譲マンションでも、生活時間の違い等に起因する騒音の問題等が発生する事がありますが、お互いに少しの気遣いと理解によって解消されるものも少なくありません。しかし、一般の分譲マンションでは、住民間のコミュニティはほとんど存在せず、会話する機会も得られずに問題が大きくなりがちです。しかし、コーポラティブハウスは事業を通じて住民同士が話し合いをする土壌を形成しているので、会話を通じて問題解決できる可能性が高くなります。
基本的にすべての分譲マンションは、長い年月の間にメンテナンスをしていく必要があり、メンテナンスを行う主体は管理組合です。管理組合を正常に機能させるには、住民間の良好なコミュニティが不可欠です。 しかし、多くの分譲マンションでは住民間のコミュニティがほとんど存在せず、結果として本来管理組合として主体的に検討・判断すべき事項も全て管理会社に丸投げしている管理組合も少なくありません。そうなると、本来クライアントである管理組合が、受託業者である管理会社にコントロールされる状況になってしまいます。実はこのような状況になってしまっている分譲マンションは少なくありません。
分譲マンションのメンテナンスは基本的に住民が毎月積み立てる修繕維持積立金によって行います。大規模な分譲マンションともなると、メンテナンスコストは数億円にのぼります。それだけの巨額の現金の運用を、まともに監視もせずに営利企業である管理会社に丸投げしている状況は異常です。この状況を正常にするためには、管理組合を正しく機能させ、管理組合が管理会社をコントロールする状況に変えるしかありません。その為には住民間のコミュニティ形成が必要不可欠です。
分譲マンションの区分所有者は、マンションの維持管理運営において必然的に運命共同体であり、法律的に誰も完全に部外者でいることはできません。完全に他者と関係を絶ちたければ戸建住宅に住むしかありませんが、それでも近隣住民や地域と無関係ではいられません。むしろ、それが煩わしいのでマンションを選択する方も少なくないと思います。
人は皆、社会的存在であって他者から切り離れて存在することは不可能です。この前提に立ち、本質的に自立した存在になろうと考えると、コーポラティブハウスの意義が見えてくるのではないかと思います。

コーポラティブハウスは一般の分譲マンションと異なる為、事業参加を検討する際には様々な情報を収集されることと思います。しかし、収集される情報は玉石混交で、正確な情報もあれば、全く勘違いな情報など様々で、これを取捨選択するには相当高い情報リテラシーが必要です。本当はどうなのか知るには、当該事業のコーディネイターに直接ヒアリングするのが一番ですが、私たちはこのブログ等を通じて出来る限り情報を提供し、正しい判断をしていただく一助となるように努力していきたいと考えています。