2013年11月12日火曜日

内淡路町ハウス


大阪市中央区内淡路町で進めていたコーポラティブハウス、「内淡路町ハウス」が竣工しました。



大阪市中央区(旧東区)は、古くから大阪城の城下町として繁栄してきた地域。印刷会社の自社ビルとして建設された従前ビルは築40年を経て老朽化が進んでいました。


近年印刷業の業態変化により、自社ビル内で印刷する事はなくなり、かつて印刷機器の置かれていた多くのスペースが空いていましたが、自社ビルとして利用する前提で建設された建物は第三者にスペースを貸与することができるプランになっておらず、建物は早急にメンテナンスを要する状況でしたが資金投下しても企業収益に結び付かないので先送りにされており、最上階のオーナー住戸も老朽化が進んでいました。

本事業では、立体買換えの特例を用いてコーポラティブ方式による建替えを行い、従前ビル所有者は資金投下をせずに印刷会社として必要なスペースを最新スペックの事務所・倉庫として確保、余剰スペースは賃貸住戸として収益を生むストックに変換、最上階にバリアフリーのオーナー住戸を計画しました。

建物は純ラーメン構造で計画し、事業参加者の希望に応じて専有面積調整を行い、個々のライフスタイルや趣味嗜好、予算に応じた住まいを実現しました。そのバリエーションの豊かさは妻面の外観にも現れており、マッシブな外観に変化を与えています。


こちらで竣工写真を見ることができます⇒http://www.cube-3.co.jp/c-uchiawaji.htm

2013年10月31日木曜日

ペイサージュ宝塚寿楽荘

宝塚寿楽荘コーポラティブハウスとして進めていたプロジェクトが、「ペイサージュ宝塚寿楽荘」として竣工しました。



計画地は閑静な邸宅地として知られる宝塚寿楽荘。大正の時代から別荘地として開かれ、昭和初期に高級住宅用地として分譲されるなど、邸宅地として格調高い生活文化が今なお受け継がれる地域です。
この街で見られる邸宅には、かつての職人の技量の高さをしのばせる地域の財産とも言える、見事な石積み擁壁や植栽などが施され、古くからの邸宅地の面影を今に残しています。

昨今、緑を伐採し石積擁壁を撤去して画一的な住宅地が分譲されていく中、本プロジェクトは石積擁壁や木々の緑を生かし、趣と品格を継承する環境共生型住宅として計画しました。

従前家屋が建っていた宅盤と前面道路に5m程度の高低差があり、この高低差を利用し、地下1階に駐車場とエントランスホールを計画。この高低差部分に施されていた緑と石積み擁壁を出来る限り残すことで、歴史に培われてきた魅力的な寿楽荘の環境に寄与する事を期待しています。



従前の邸宅に置かれていたオブジェをエントランスに設置しました。

 

様々なオリジナルな住まいが実現しました。


周囲を囲む緑が様々な所から飛び込んできます。



従前の邸宅で使われていたアンティックなシャンデリアも再利用しました。


腰かけることのできる和室です。


2013年9月30日月曜日

コーポラティブハウスのデメリット・問題点について

近年、コーポラティブハウスについてメディアなどで話題になることも多くなったことで、様々な情報等がネットで紹介されています。しかし、中には不正確なものも少なく無く、かえって誤解を助長させる懸念のある情報もあるようです。実際にコーポラティブハウスの事業に関わっている者の眼から、出来る限り客観的に正確な情報をお伝えしておきたいと思います。

○瑕疵担保責任についての問題


 コーポラティブハウスは、基本的に建設組合が直接設計事務所に設計を発注し、直接建設会社に工事を発注して建物を建設します。従って、設計事務所と建設組合は直接業務委託契約を、建設会社と建設組合は直接工事請負契約を締結します。問題が発生した際の責任や補償に関しては、各契約書で明文化することにより明確にすることが可能です。
平成21年10月1日より、住宅瑕疵担保履行法がスタートし、新築住宅を建設する事業者に対して、瑕疵の補修等が確実に行われるよう、保険や供託を義務付けられるようになりました。これは、直接工事請負契約を締結する建設会社に対しても義務付けられており、万が一、事業者が倒産した場合等でも、2000万円までの補修費用の支払いが保険法人から受けられるようになっています。

○流動性が著しく低い

コーポラティブハウスは完成してしまうと区分所有登記され、一般的な分譲マンションと基本的には全く同じ所有形態となります。従って、一般的な分譲マンションと同様に中古流通市場で売買することができます。最近の傾向では個性的な住まいを希望される方が多くなってきており、一般的な分譲マンションの中古流通相場価格よりも高い評価で取引される事例も少なくありません。

○コストは安くない

コーポラティブハウスが割安であると言われるのは、分譲集合住宅事業の収支内訳において大きな割合を占めるディベロパー利益(価格の約10%程度)や販売経費(モデルルーム関連コスト、膨大な広告宣伝費)を削減でき、原価の積み上げで事業を組み立てることができるからです。
大量生産型の一般的な分譲マンションと比較すると、確かに規模が小さかったり自由設計対応を行うことで工事費や設計費は割高になり、コーディネイト費もかかりますが、上記事業フレームの差異により、同一仕様で比較した場合、取得費用総額を一般的な分譲マンションよりも安く抑えることが可能となります。もちろん、個別設計において仕様を上げていけばその分の費用は上乗せされるので、単純に安いというわけではありません。
管理会社は一般の分譲マンションのようにディベロッパー系列の管理会社が予め設定されているわけではなく、建設組合がコンペで選ぶなど競争原理を導入する等の工夫により、管理費の世帯あたりの負担を一般的な分譲マンションよりもむしろ低く抑えている事例も少なくなく、高くつく傾向があるとは言えません。保険に関しては、コーポラティブハウスと一般的な分譲マンションの間に差異はありません。

○脱退コストが高い

コーポラティブハウスは建設組合が主体的に事業を進めていくという事業の性格上、事業進捗中の事業の安定性を図る為に事業中の脱退を様々な形で規制しているものも少なくありません。しかし、一旦完成してしまうと、所有形態は一般の分譲マンションと全く同じなので、一般の分譲マンションと比較して流動性が低いという事は無く、基本的に自由に売却する事も可能です。従って、特に脱退コストが高いという事はありません。

○人間関係は難しい

一般の分譲マンションでも、生活時間の違い等に起因する騒音の問題等が発生する事がありますが、お互いに少しの気遣いと理解によって解消されるものも少なくありません。しかし、一般の分譲マンションでは、住民間のコミュニティはほとんど存在せず、会話する機会も得られずに問題が大きくなりがちです。しかし、コーポラティブハウスは事業を通じて住民同士が話し合いをする土壌を形成しているので、会話を通じて問題解決できる可能性が高くなります。
基本的にすべての分譲マンションは、長い年月の間にメンテナンスをしていく必要があり、メンテナンスを行う主体は管理組合です。管理組合を正常に機能させるには、住民間の良好なコミュニティが不可欠です。 しかし、多くの分譲マンションでは住民間のコミュニティがほとんど存在せず、結果として本来管理組合として主体的に検討・判断すべき事項も全て管理会社に丸投げしている管理組合も少なくありません。そうなると、本来クライアントである管理組合が、受託業者である管理会社にコントロールされる状況になってしまいます。実はこのような状況になってしまっている分譲マンションは少なくありません。
分譲マンションのメンテナンスは基本的に住民が毎月積み立てる修繕維持積立金によって行います。大規模な分譲マンションともなると、メンテナンスコストは数億円にのぼります。それだけの巨額の現金の運用を、まともに監視もせずに営利企業である管理会社に丸投げしている状況は異常です。この状況を正常にするためには、管理組合を正しく機能させ、管理組合が管理会社をコントロールする状況に変えるしかありません。その為には住民間のコミュニティ形成が必要不可欠です。
分譲マンションの区分所有者は、マンションの維持管理運営において必然的に運命共同体であり、法律的に誰も完全に部外者でいることはできません。完全に他者と関係を絶ちたければ戸建住宅に住むしかありませんが、それでも近隣住民や地域と無関係ではいられません。むしろ、それが煩わしいのでマンションを選択する方も少なくないと思います。
人は皆、社会的存在であって他者から切り離れて存在することは不可能です。この前提に立ち、本質的に自立した存在になろうと考えると、コーポラティブハウスの意義が見えてくるのではないかと思います。

コーポラティブハウスは一般の分譲マンションと異なる為、事業参加を検討する際には様々な情報を収集されることと思います。しかし、収集される情報は玉石混交で、正確な情報もあれば、全く勘違いな情報など様々で、これを取捨選択するには相当高い情報リテラシーが必要です。本当はどうなのか知るには、当該事業のコーディネイターに直接ヒアリングするのが一番ですが、私たちはこのブログ等を通じて出来る限り情報を提供し、正しい判断をしていただく一助となるように努力していきたいと考えています。

2013年6月19日水曜日

街なか居住のすすめ:17

「街なか居住のすすめ」を16回にわたって連載してきましたが、果たして街なか居住は住む人にとって魅力があるのでしょうか?
日本の街なかは、世界でも最も人口密度が高いと言われてきましたし、私たちもそうだと思ってきました。しかし、その実態はある意味正しく、ある意味正しくありません。



これは、約20年近く前に、あるシンクタンクがまとめた人口密度と圏域距離の相関図です。
この図を見ると、東京の都心4区の人口密度は、ほぼ同面積のマンハッタンやパリ市よりも大幅に低く、その外周圏域の人口密度は、逆に東京圏よりもニューヨーク都市圏やパリ首都圏の方が低くなり、東京では周辺部から都心部に通勤している状況が確認できます。
昼夜間人口比も、東京都心4区では6.2、マンハッタンでは2.3、パリ市では1.4と、東京が突出して昼間人口に対して夜間人口が少なく、この状況を裏付けています。

東京都心部に、かなりの人口流入がおこっておりますが、大きく見ると、約20年前のこの状況が変わるほどには至っていないのが現状ではないかと思います。

このように、広域で考えると東京の人口密度は非常に高いものの、都心部だけを見ると、世界の大都市に比べて人口密度は低いという事がわかります。マンハッタンやパリに行くと、都心部に多くの人々が居住していることが実感できます。そして、都市としての歴史の中で、これだけの人口密度を支えつつ、快適に暮らすことのできる文化が成熟している事を実感します。日本の街なか居住は、まだその魅力を十分に感じることができない段階なのかもしれません。

高度経済成長時代、都市への急速な人口流入に伴い、街なかの住環境は急激に悪化しました。それを解消するための方法として、街なかを高度利用する方向ではなく、公共交通機関を整え、通勤する方法で住環境の改善が図られました。

そのことにより、今でも私たち日本人は郊外に住んで街なかに通勤するのがあたりまえであり、街なかに居住するというのは特殊であるというような感覚を持っています。しかし、日本は伝統的に人口密度の高い都市において、すぐれた住環境を確保してきた歴史を持つ国です。明治維新以前の江戸や京都は世界最大でかつ最高密度の都市であり、その都市では多くの市民が居住し、働いており、さらに来日した外国人が目を見張るほど、良好な住環境を整えていました。むしろ、郊外から通勤する職住分離のライフスタイルの方が、近代以後に定着したものであり、本来私たち日本人が長い時間をかけて継承・熟成してきたものでは無いのです。

私自身、兵庫県の県庁所在地である三宮のターミナル駅から徒歩圏で計画したコーポラティブハウス、アンビエンテ北野に約10年近く住み、働いてみ て、街なか居住の魅力を実感しています。日本では、まだ多くの人が、郊外住宅地に住んで公共交通機関を利用して通勤するのがあたりまえだと考えていると思い ますが、実際に街なか居住をして感じた魅力を少しでもお伝えする事ができればと思います。

アンビエンテ北野


何が魅力か?
一言で言えば日々の生活が楽しいということです。
この楽しさは、一度でも街なか居住をしてみないと、なかなか実感できないものかもしれません。


まず、徒歩圏内においしいレストランや、洒落たバーが無数にあります。
おそらく、人生の中ですべての店を回りきることは不可能でしょう。
ミシュランに掲載されている店だけでも20件以上あります。
食事に行って、お酒を飲んでも、家まで歩いて帰ることができます。
街なか居住を経験してから住宅地に住んだことがあるのですが、あまりに楽しくないのに驚きました。
家族で食事に行くにしても、車で行くとなると飲酒はできません。
なかなか家族で電車に乗ってまで食事に行く気がしません。
結果、都心居住していた頃は頻繁に行っていた、家族で外食する事はほとんどなくなりました。
その頃から、もう一度街なかに居住したいとう思いが募り、アンビエンテ北野に取り組む際の原動力になりました。

街なか居住は買い物や通学、通勤に便利なのはもちろん。
人生で移動に費やす時間を大幅に減らすことができ、その時間を余暇に回すことができます。
徒歩圏にジムや映画館もたくさんあり、少しでも時間ができた時に気軽に利用する事ができます。
図書館や美術館、博物館等、様々な文化施設等に行く頻度も高まっています。

住んでみて意外だったのが、とても静かであることです。
アンビエンテ北野は、北野町の高台に位置するので窓から三宮の街並みが一望できるのですが、街の喧噪が一切聞こえません。おそらく暗騒音は高いと思うのですが、暗騒音のマスキング効果かどうかわかりませんが、夜になっても街の喧騒が全く聞こえません。住宅地に住んでいた時に聞こえた、遠くで鳴る救急車等のサイレンの音も聞こえません。

ある程度の喧騒は覚悟していたので、これは非常に意外でした。
逆に、山が近いので、朝は野鳥の声が街を覆います。
最初はどこかで野鳥の声を録音して放送しているのかと感じたぐらいです。
実は、本当に野鳥が住まいの周りまで来ていました。
これほど自然を身近に感じることができるとは、全く期待しておりませんでした。

また、地域活動が活発である事にも驚きました。
神戸は明治の開港以後開けた、150年程度の歴史の街ですが、北野・山本地区という異人館街の住民は土着性が高く、戦前から住まれている方も大勢おられることを知りました。
神戸の住宅地は基本的に戦後発展した所が多く、住宅地に住んでいる時にはマンション等に住む新しい住民ばかりが見えていたのですが、街なかに住むと、長らくこの町に住まれている方々とのつながりがたくさん生まれました。大都市の中心地なのに、まるで田舎に引っ越してきたかのようなこの感覚は、全く期待していたかったものですが、とても住み心地のよいものだと感じています。

明治の開港以後開けた街で、元々住まれていた方がほとんどおられなかったという事もあるのでしょう、住まれている方々が社交的で明るいのも特徴的です。外国人も非常に多く、神戸に土着化している外国人も多いので、多様性があたりまえのような感覚があります。地域内に神社やお寺だけでなく、イスラム教会、ユダヤ教会、カトリック教会、バプテスト教会、東方正教会、ジャイナ教会他、様々な宗教施設が仲良く共存しています。この事が、この地域への外国人の土着化を促進しているのかもしれません。

外国人だけでなく、日本人も含めてライフスタイルも多種多様です。新興住宅地では、大企業会社員等、偏った属性の人々が集まる傾向があります。一気に街ができることで入居者の世代も偏り、結果として居住者とともに街が老いていくような状況が生まれます。しかし、街なかには様々な世代、様々な仕事をしている方々が住んでいます。この事で生まれる多様性も、他者を受け入れるおおらかな価値観に繋がっているのかもしれません。

さらに、どこに行くにしても交通利便性は至便です。
新幹線の新神戸駅にも歩いていく事ができます。
三宮駅には、JR、阪神、阪急、山陽、地下鉄様々な電車が乗り入れています。
神戸空港も近く、車で行っても2日間無料の駐車場が便利です。
阪神高速道路にも近く、新神戸トンネルを経由すれば山陽道や中国道にも出る事ができます。
これ以上、求めようが無いほど利便性に恵まれており、行き先に応じて選択することができます。

夜でも人が出歩いているので怖くありません。

女性の一人歩きも全然大丈夫です。
むしろ、住宅地の方が、夜になると道から人がいなくなるので怖いと思います。
セコム等セキュリティ会社に入っている家も多いので、警備員が巡回しており、何かあるとすぐに飛んできてくれるのも安心です。

大人の目にさらされるからでしょうか、夜のコンビニで子供を見かけることもありません。
いわゆる繁華街の中であれば別でしょうが、繁華街以外では、健全な環境が保たれているように思います。


また、驚くほど山にも近いです。
北野町の登山口に足を踏み入れると、途端に峡谷になります。
登山道を経由して、布引の滝や市章山・錨山、様々な所に行く事ができます。
まさか、こんな街なかに住みながら、徒歩でハイキングに行く事ができるとは思っていませんでした。

私はこの街に住んで、本当によかったと感じています。
キューブでは、今後とも継続して、この地域でコーポラティブハウスを事業化したいと考えています。
現在も、アンビエンテ北野、ル・パッサージュ北野につぐ、第三弾目となるコーポラティブハウス、神戸北野山本通コーポラティブハウスⅡの参加者を募集しています。

街なかに住むのは本当に楽しいです。
この楽しさを、もっと多くの方々にも知って頂きたいと考えています。

是非、街なか居住を一度経験してみてください。
今後もキューブは街なかでの事業化にこだわり続けます。


2013年4月18日木曜日

街なか居住のすすめ:16

今回のモデル事業で、鳥取市の街なかに定期借地のコーポラティブハウスが誕生したことは非常に重要です。しかし、これをモデル事業で終わらせるのではなく、民間に波及させていく事が、さらに重要です。

最初に説明したように、地方都市の街なかを再生する事は待ったなしの状況です。
何もしなければ、近い将来には取り戻すことができない所まで衰退が進んでしまう事でしょう。
ここでご紹介した事業等を参考に、鳥取市の街なかの土地所有者の方や宅建事業者、建設業者や設計者の中から、具体的な事業に取り組む方が出てくることを心から願っています。

最後に、街なかにおける事業の最新事例をご紹介します。
 これはコーポラティブハウスではなく、一般分譲事業です。
先程ご紹介した、宇多野コーポラティブハウスや鳥取西町コーポラティブハウスは、定期借地権の原契約に増改築に対する制限を加えることにより将来の安全性を担保し、一団地申請を可能としていました。
現在、京都で進めている事業は、定期借地権ではなく所有権で、同様に一団地申請を行っています。ここでは増改築に対する制限を、区分所有法により行う事でクリアしました。
このように、街なか居住に向けた工夫の余地は、まだまだあると思います。
工夫次第で、街なか居住の魅力を、より引き出すことも可能であると思います。





今後、街なか居住をより推進してくためには、魅力的な街なかライフスタイルの普及・啓発が必要です。そして、値ごろ感のある住宅供給をしていかなければなりません。さらに魅力的で多様な住宅供給も必要です。そして、良好な住環境を実現していかなければなりません。これらを実現するためには、資本が無くても事業化できるコーポラティブ方式は有効な手段の一つです。しかし、まだまだ事例としては少なく、広く普及していく為には、公的支援の推進も必要です。



しかし、本当に必要なのは、現在の状況を理解し、確実に迫りくる未来に対する危機感を持って、自ら行動しようとする一人の力です。
現状を嘆いていても、行動が伴わなければ、未来は何も変わりません。
自ら行動する事が、唯一、明るい未来に繋がる道であると思います。

有史以来、人口増加し続けてきた日本がこれから突入する人口減少時代は、歴史的にも経験したことの無い世界です。おそらく、今までの常識が、すべて裏返るほどの価値観の転換を私たちは求められることになるでしょう。 そんな時代の入り口に私たちは今立っていると認識することが重要だと思います。

鳥取市公式ウェブサイト「街なか居住のすすめ ~土地活用と街なか暮らし~」
http://www.city.tottori.lg.jp/www/contents/1365467290057/index.html

2013年4月17日水曜日

街なか居住のすすめ:15

今までご紹介してきた事業は、すべてコーポラティブ方式で事業化された、コーポラティブハウスです。コーポラティブハウスとは、一般の分譲マンションのように完成した住宅を購入するのではなく、住宅の購入を考えている方々が集まり、共同で土地を取得し、各自の要望を取り入れながら設計し、自らが工事の発注を行って住宅を取得するという方法です。
なかなか文章だけでは具体的なイメージを掴むことが難しいので下の図をご覧ください。
一般の分譲マンションは、まずマンション開発業者が土地を取得し、設計事務所に設計を発注し、建設会社に工事を発注して、出来上がったものを販売していきます。
ところが、コーポラティブハウスは、まずそこに住みたいという方々が集まって建設組合を結成し、この建設組合がマンション開発業者になり代わって、土地を取得したり、設計事務所に設計を発注したり、建設会社に工事を発注するしくみです。
ただ、マンション事業は様々な専門知識が必要で、そこに住みたいという方々が集まって作った建設組合だけで事業を進めることは困難です。そこで、必要な情報を提供したり、事業を円滑に進める為のサポートを行うコーディネイターの協力を仰いで事業を進めるのが一般的です。


このようにすることで、様々なメリットが生まれてきます。
まず、事業にとっては参加者募集を通じて市場調査を行うことができ、集客状況に応じて住戸面積等企画内容を調整する事が可能です。このように、ニーズに応じて企画内容を調整する事が出来るという柔軟性は、事業のリスクを低下させます。
また、先行募集により参加者を確定させてから事業を進めるので、受注生産型で事業を進めることが出来、事業リスクの低減につながります。
また、各契約が直接契約になるので、経費低減にもつながり、手元資金の潤沢な参加者は手元資金を活用することができるなど、事業期間中金利を外部化し、合理化する事が可能です。
さらに、事業に占める間接経費率が低いので、ここで紹介してきたような等価交換事業、狭小地や変形地、定期借地事業等との相性が良好です。
そして、複雑な権利関係を整理したりする為に活用する事も可能です。

事業参加者にとってもメリットがあります。
収支の内訳がガラス張りになるので、原価が明らかになり、モデルルーム等の無駄な経費が省かれるため、納得の価格で取得することができます。
また、個別設計を行うので、入居者の住み方に合わせた自由設計が可能です。
そして、参加者が協同して住まい創りを進めていく為、良いコミニュケーションが育ち、入居後の管理もスムーズに行きます。
集合住宅の維持管理は、管理組合が主体的に行うことが必要で、その為には入居者間に良いコミニュニティが形成されることは非常に重要です。


2013年4月16日火曜日

街なか居住のすすめ:14


次に行った定期借地事業でも、等価交換のような形で事業フレームを構築しておりますが、こちらは租税特別措置法の立体買い替えの特例ではなく、先払い地代の考え方に基づいて、事業を構築しました。先払い地代の考え方とは、少しでも定期借地事業における収益性を向上させるべく、一時金を先払い地代と捉え、定期借地期間に散らして計上するという考え方で、一時金が単年度課税される場合と比較して、大幅に税率を低減させることを狙った取組です。この考え方は、国土交通省を通じて財務省に投げかけられ、考え方の妥当性が確認されました。先程ご紹介した塚口の事例のあと、この考え方の妥当性が確認されたので、本事業ではこの考え方に基づいて事業を構築しました。

本事業は、極端な旗竿形状の420坪もある邸宅跡地で、敷地内に高低差があり、多くの植栽が自生している状況でした。接道状況から開発することもできず、従前の土地状況をそのまま活かす事業計画が求められました。
そこで、本事業では従前の地盤形状や緑をそのまま残し、一団地申請により、平地部分に建物を分散配置させる計画を行いました。
京都市では、長らく民間事業に対して一団地の許可を与えて来なかったのですが、本事業では定期借地の原契約において、増改築に対する制限を加えることにより認められました。

具体的には4棟のテラスハウスで団地を構成し、その1棟は土地所有者が建てる賃貸住戸として計画しました。この賃貸住戸を建てるに当たり、先払い地代を充当することで、土地所有者の負担を大幅に低減することができました。このように、単純な定期借地事業ではなく、賃貸事業と複合化
することにより、事業性を向上させることに繋げることができました。


定期借地事業は、普通に計画してしまうと、収益性の高い事業を構築する事は困難です。
しかし、先程の塚口の事例は診療所との複合化、本事業では賃貸住宅との複合化を図っており、複合化することにより、より収益性の高い事業を構築する可能性が広がります。

2013年4月15日月曜日

街なか居住のすすめ:13

次に、定期借地事業の事例をご紹介します。
この事業は、勤務医をされている地主様のご子息が診療所を開業するために、定期借地権を設定する際の権利金を活用して診療所床に等価交換した事例です。

定期借地の権利金は、その額が土地評価額の1/2を超える場合は譲渡所得課税。1/2以下の場合は不動産所得課税されます。不動産所得課税されてしまうと、単年度に他の収入と合算して税率が決定されてしまう為、非常に税率が高くなってしまいます。しかし、譲渡所得課税の場合は、土地を売却した場合と同じように税率が低減され、立体買い替えの租税特別措置法の対象にすることも可能です。そこで、本事業ではこのことを利用し、権利金の額を土地評価額の1/2を超える設定とし、それによって診療所床を取得するスキームを設定しました。このようにすることで、権利金に対する課税は繰り延べされ、権利金を100%有効に活用することができます。



さらに、本事業では旧建設省の建築研究所で開発された、スケルトン型定期借地権を関西で初めて採用しました。具体的にスケルトン型定期借地権事業に関わる事で、この仕組みの持つ可能性を強く実感しました。スケルトン型定期借地権に関しては、本ブログ中、別途詳しくまとめておりますので、そちらをご参照ください。



2013年4月13日土曜日

街なか居住のすすめ:12

このような取り組みは、様々な所で行われており、鳥取市と同様、県庁所在地の地方都市である岡山市でも事業化されています。
岡山市の中心市街地は、鰻の寝床と言われるような、狭小間口で奥行の深い土地が多く、そのような土地を開発するために道路を通してしまうと大半の敷地が道路に取られてしまい、事業の有効率が大きく低下してしまいます。
そこで、敷地に道路を通したり分割したりせずにそのまま活用する事業が行われました。



また、中心市街地にはアメーバのような形をした変形地も点在しています。
このような土地も、道路を通そうとすると、敷地の大半を道路に取られてしまい、それでは事業として成立しません。そこで、道路を通したり敷地を分割したりせずに、そのまま大きな敷地を活用した事業が行われました。


以上の岡山の事業は、かつてキューブに社員として在籍したことのあるコーディネイターが、自ら経営する不動産会社で事業化しました。地方都市における街なか居住の可能性を実感させるプロジェクトだと思います。

2013年4月12日金曜日

街なか居住のすすめ:11


こちらは、容積率400%と、高度利用可能な敷地でありながら、42.5坪しかなく、用途地区に見合った計画が難しかった土地における事業です。敷地の小ささを逆に活かして、1フロア1戸の計画を行いました。



こちらは、210坪の邸宅跡地における計画です。
従前は、見事な石積み擁壁と植栽が施された邸宅でした。
しかし、戦前に普請された建物ということもあり駐車場が無く、前面道路と宅盤との間に高低差が5m程度あり、有効な土地活用が難しい敷地でした。一般的には、従前の石積み擁壁を撤去し、コンクリート擁壁で宅盤を形成していくような開発手法が取られたことと思います。しかし、そのような開発手法を取ると、地域の財産とも言える従前の見事な石積み擁壁と植栽が失われてしまうのみならず、多大なる造成コストがかかる為、土地評価が非常に低くなってしまいます。
そこで、従前の石積み擁壁と植栽を出来る限り残し、その一部を切り抜いて地下にエントランスと駐車場を確保することで、石積み擁壁と植栽を活かしながら、造成コストが少なく、その分土地評価に反映できる計画を行いました。

2013年4月11日木曜日

街なか居住のすすめ:10


次は、狭小地、変形地における事業を紹介いたします。

この敷地は、4mしか接道していない、極端な旗竿形状の敷地でした。
さらに北斜面で、敷地南側には隣地の擁壁がそびえたっていました。
そこで、6戸のテラスハウスを計画し、北斜面を利用して地下に駐車場を確保しました。
また、各戸に中庭を設けることで、南隣接地の擁壁の影響を緩和し、住戸の独立性を高く保つ事ができるように計画しました。

中庭は他から覗かれないので、各戸の独立性は高く保たれています。
また、屋上テラスを設けているので、各戸から絶景の眺望を得ることもできるように計画しています。このように、旗竿形状という地型の悪さを逆手にとって、地型が住戸の魅力を生み出すように計画を行いました。

2013年4月10日水曜日

街なか居住のすすめ:9


さらに複雑な権利関係を、事業を通じて整理した案件もあります。
従前は、戦後間もなく建設された木賃アパートが立ち並んでいました。
しかし、時代に合わなくなった木賃アパートは、どんどん入居希望者が減り続けており、空室で新規募集を図っても、全く反応が得られない状況になっていました。

従前の木賃アパートは、親族法人が所有することで借地権が発生しており、底地は相続権利者の共有となっておりましたが、既に二次相続が発生し、底地を兄弟で共有している状況でした。さらに、一部住戸は、土地建物ともに、先代の兄弟が所有しておりました。

木賃アパートを解体して、新たに賃貸マンションを建設する計画が検討されましたが、親族法人と親族間で複雑に絡んだ権利関係が問題となり、具体化に至りませんでした。このまま放置しておき、このままの状態で次の代に継承されると、さらに権利が複雑になり、権利関係を整理する事が不可能になる事態も予想されました。

そこで、等価交換により、親族法人、底地を共有する各権利者毎に権利変換して住戸を取得することで、権利関係を整理しました。一部の土地建物を所有していた先代の兄弟は、居住用資産の買い替え特例により、地区外のマンションを購入しました。従前はほとんど入居者がおらず、売り上げの上がっていなかった親族法人ですが、等価交換により取得した賃貸住戸から収益が得られるようになりました。

このように、等価交換を活用する事で、資金投下することなく複雑な権利関係を整理し、収益を得ることができる状況にすることができました。


2013年4月9日火曜日

街なか居住のすすめ:8


こちらは、築年数の古い賃貸マンションを、4人兄弟で法定相続された案件です。
立地は非常に良かったのですが、築年数が古いため、賃料を下げてもなかなか借主がつかない状況になっていました。
さらに、和式トイレだったり設備内容が現代的ではなく、少々リフォームした所で状況が改善したり、投下資金が回収できる目途がたつような状況でもありませんでした。
4人兄弟は遠方に住まれているため管理に困り、ご長男様が転居してきて管理されていました。
そんな状況の中で、従前の賃貸マンションを建設した工務店を通じて相談がありました。
基本的には、ご長男は先祖から引きついだ土地なので、所有し続ける義務があると考え、その地に住み続けることを希望されていました。
しかし、他のご兄弟は、売却して換金し、兄弟で分けることを希望されており、兄弟間で方針が定まらない状況でした。
そこで、等価交換を活用してマンションを建設し、ご長男はそのマンションを取得し、他のご兄弟は売却金を按分する提案を行いました。
結果的には次男様も事業に参画されることになりましたが、ご長男とは別区画を取得され、将来的に分離処分できるように権利関係を整理しました。

このように、等価交換事業により、親族間で共有している土地・建物の権利整理を行い、権利者毎に分離処分できる状況に置き換えました。将来二次相続が発生した場合にも、権利がより細分化することなく、住戸単位で整理がつくようになりました。

街なかには、相続対策を見据えて、かつて、賃貸マンションを建設された方々も少なく無いと思います。しかし、長い年月の間に、間取りや設備のニーズが変わってしまい、そのままでは借主が入らなくなっている案件もあることと思います。しかし、少々資金投下してリフォームした所で、投下資金が回収できるだけの人気が得られるかどうかわかりません。しかし、現状維持では借主が入らなく、保有コストが収益を上回ってしまう状況にもなりかねません。

そこで、、本プロジェクトのように、等価交換を活用して区分所有マンションに建て替え、従前資産評価に応じて住戸を所有するという方法が考えられます。このようにすると、複数住戸を所有する事ができ、将来二次相続が発生した場合にも、物納したりする方法も住戸単位で可能となります。通常は複雑な権利関係の解消は土地売却して現金で按分する方法しかありませんでしたが、このようにすれば、希望に応じて権利整理をすることが可能となります。

2013年4月8日月曜日

街なか居住のすすめ:7

具体的な街なかの土地活用事例をご紹介いたします。
今回ご紹介する事例は、大きく分けて、
1.等価交換事業、
2.狭小地、変形地における事業、
3.定期借地事業
の3種類です。

まずは、等価交換事業からご紹介いたします。
等価交換事業とは、土地は地主が、建設費は開発者が負担して建物を作り、完成後にそれぞれがそれぞれの出費の割合に応じて土地と建物を取得する開発方法を言います。
等価交換により、土地所有者は資金投下をせずに事業に取り組むことが可能となります。

まず最初にご紹介するのは、阪神淡路大震災で倒壊した、長屋の共同建替え事業です。
阪神淡路大震災で、JR六甲道駅近くの商業地にあった従前5件長屋が全壊しました。
従前居住者は高齢者が多く、新たに住宅を建てるには負担が大きく、土地はそのまま放置して市営住宅等に入る事を検討されている方もおられました。
しかし、長年ご近所付き合いしてきた方々と別れるのもつらく、なんとか震災まで居住していたところでの再建を望まれていました。
そこで、等価交換により共同住宅を建設する事になりました。
従前地権者の方々は、所有する土地の権利を売却し、その場所に建てられる共同住宅において、土地売却価格と等価の住戸を取得するというスキームです。
このように等価交換を活用すれば、新たな資金投下をしなくても、従来住んでいたところに戻って住むことが可能になります。




2013年4月6日土曜日

街なか居住のすすめ:6

日本全体を見てみると、日本の人口は2004年をピークに、すでに人口減少社会に突入しています。高齢化率はすでに総人口の2割を超え、世界第一位となっています。
こういった情報は色々な所で言われているので、情報としては皆知っていますが、なかなか実感が伴いません。しかし、グラフで見てみると、かなり実感が得られるのではないかと思います。

現在は、図示してある所で、これを見ればわかるようにピーク時からほとんど変わっていません。放物線の頂点近くにいるため状況変化は緩やかで、実感が得られないのはあたりまえなのです。グラフを見れば明らかなように、これから年を追うごとに急速に人口減少が進んでいく事になります。

このグラフを見て感じられることが他にもあります。
高齢化率がどんどん進むと言われていますが、高齢者の絶対数はさほど変わらない事がわかります。水色の幅は今まで急速に広がってきましたが、これからはあまり変わりません。これは近年、街を見ていると急速に高齢者が増えてきたように感じられる実感とも合致します。医療における革命的な技術革新がおこらない限り、寿命は大きくは変わらないでしょうから、高齢者人口の変化が少ないのだと考えられます。
子供の数は今までと同様少しづつ減り続けていきます。
劇的に減少するのが、黄色の部分、生産者人口です。全体の人口減は、ほとんど生産者人口減と言ってよいほど減少していくことがわかります。

このグラフは、現在を起点として前後50年を切り取った部分のみを見ていますが、もっと大きな歴史の中で現状を見てみると、現在は、歴史的に見ても衝撃的な変換点であることが確認できます。

これは、有史以来の日本の人口をグラフにしたものです。
先程のグラフは、丁度この赤く囲んだ100年を切り取ったものになります。
かつて日本は縄文時代にかなり大きく人口を減らした事があったようですが、基本的には常に日本の人口は有史以来増え続けてきたことがわかります。
少しづつ人口を増やしてきた日本ですが、江戸時代の約250年間で人口は約2倍になりました。
明治維新頃には約3000万人程度だった日本人は、ここから急速に増え続け、およそ150年間で約4倍にまで膨れ上がりました。もの凄いスピードです。

しかし、これからはその間の増加の速さに匹敵するスピードで人口減少することが予想されています。2050年代には人口が9000万人を割り込む可能性すら示唆されています。これから35年程度で3500万人減るという事は、毎年100万人づつ人口が減るという暴力的な減り方です。
第二次世界大戦では、約6年間で300万人(軍人、一般人共)の死者が出たということですから、戦争時の倍のスピードでこれから人口減少が起こるという事です。
現時点では人口曲線の放物線の頂点の近くにいる為、人口減少の実感が伴いませんが、これから間違いなくそのような社会に突入します。そして、その人口減少は、ほとんどが生産人口の減少という形で現れるのです。これは予言ではなく、統計的な予測であり、多少の誤差はあるでしょうが、大きな傾向としては避けられない、必ず来る未来だと考えられます。
さらに、人口減少は、大都市よりも地方都市の方が早く進んでいます。
地方都市の未来を考える上で、この状況を深刻に捉える必要があると思います。
既に人口減少局面に入っているのに、ドーナツ化を進めているような状況ではありません。
急速な生産人口減少は、行政の税収を直撃します。
このままでは、行政がインフラ整備に耐えられなくなるなるのも時間の問題です。
鳥取市が街ごと無くなってしまうかもしれないという可能性は、単なる絵空事ではないのです。
「ペッパー警部」大ヒットした1976年から、既に37年が経過しました。
今から37年後、2050年を迎える日本は、そう遠くない所まで近づいています。


以上の事を踏まえると、歩いて暮らせる市街地居住の再生は急務であると言えます。
今後、郊外住宅地が高齢化すると、定年退職により通勤しなくなるので街なかの駐車場利用者は減少します。
駐車場利用者が減少すると賃料収入が低下し、土地の利用価値が下落します。
街なかが駐車場だけになり、商店等がなくなってしまう所まで街なかの衰退が進んでしまうと、街なかの再生は非常に困難です。
街なかの魅力を維持するためには、まず人が街なかに多く住むことが必要です。

アンケートの結果からわかるように、鳥取市では現時点では街なかに住みたい方々が鳥取市民の2割程度もおられます。現在の所、それだけ鳥取市の街なか居住の魅力があるのだと言えるでしょう。この魅力があるうちに、街なかの再生が必要です。

街なかの再生に向けて、街なかに住宅供給を行う為には、街なかの土地の流動化を進める事が必要です。土地の流動化を促進させる為には、土地所有者が土地を供出する必然を生み出す必要があります。

キューブでは、積極的に街なかの住宅供給に取り組んできました。
街なかの土地所有者に参考にしていただく為、今までキューブが取り組んできた事例を中心に、次回より具体的な事業を紹介していきたいと思います。



2013年4月5日金曜日

街なか居住のすすめ:5


地方都市においても、大都市が都心回帰に向かった本質的背景は同じです。
車に依存し続ける生活はいつまでも続けることは困難ですし、オールドニュータウン問題はいずれ顕在化します。まだ顕在化していないのは、大都市に比べて郊外住宅団地の開発年次が新しいだけです。

街なかが衰退してしまう前に、再生が求められています。
一度衰退しきってしまうと、そこから再生する事は非常に困難です。

高齢者や子供も安心な「歩いて暮らせる街」をつくらなければなりません。
職場と住まいが近く、車に依存しない暮らしが求められています。
街なかがコンパクトにまとまると、一人あたりの行政コストを減らすことにもつながります。
街なかであれば、既存の社会資本(上下水道、各種施設)を有効利用することが可能です。
福祉他の様々な公共サービスの効率化をはかる事も可能です。
このままドーナツ化が進み続けると、行政が支えきれなくなる時期も、あまり遠くありません。
また、街の顔は、その街の歴史に築き上げられたものあり、都市の文化の象徴です。
そんな街の顔も、街なかが衰退してしまうと失われてしまいます。


鳥取市と独立行政法人建築研究所が行ったアンケートの結果を見ると、街なかに住みたい人が約2割程度もいることがわかりました。その理由として挙げられたのが、買物、通院、通学に便利、教育、文化施設が充実しているというものでした。
鳥取市の街なかは、まだ2割もの人々が住みたいと考えるだけの魅力があることがわかりました。
これは、昭和40年頃に、実際に街なかに住まれていた割合に匹敵する割合です。
街なかが衰退してしまい、魅力がなくなってしまう前に手を打てば、まだ再生への可能性が残されていると言えます。これは、大きな希望です。しかし、今何も手を打たずに状況に任せていると、遠からず再生への可能性が失われてしまう、危機的状況でもあると言えます。

2013年4月4日木曜日

街なか居住のすすめ:4


大都市圏では急速に都心回帰が進んでいます。


バブル経済崩壊後、地価の下落と企業保有地の大量放出等により、利便性の高い都心部において、比較的安価な住宅の大量供給がなされ、都心居住者が増加しています。
このグラフは東京のものですが、恒常的に人口減少し続けていた状況が一変し、近年は人口が増加し続けている事が確認できます。
特にその傾向は都心部程顕著となっています。



近年、高齢者の運転免許返納が急増しています。
以前は身分証明証として、車に乗らなくても運転免許証を持ち続ける人が多かったのですが、身分証明証となる運転経歴証明書を発行するようになってから、急速に運転免許証を返納する方が増えだしました。しかし、公共交通機関が充実していない地方都市では車への依存は深まり続けており、なかなか免許証を手放すことはできません。しかし、これからもどんどん高齢化が進む中、いつまでも安全に運転できるわけではありませんので、車に依存し続けるにも限界があります。




戦後急速に人口流入がおこり、早くから郊外住宅地開発を進めていた大都市圏では、オールドニュータウン問題が顕在化しています。
ニュータウンの街びらき時に一斉に入居した人々が一斉に高齢化し、郊外住宅地の高齢化問題が深刻化しています。郊外住宅地の高齢化によって購買力が低下し、核となる大型店舗の撤退が相次いでいます。核となる大型店舗が撤退してしまうと、商店等がほとんどない郊外住宅地では車に乗らないと生活が成り立たなくなります。このようにして買い物弱者が発生し、自らの力によって環境を立て直すことが出来る人は住まいの場を移すなどし、それができない人が取り残されるようになるなどして、郊外住宅地が限界集落化するような例も出始めています。

このような背景が、大都市圏における都心回帰を加速させているのではないかと考えられます。



2013年4月3日水曜日

街なか居住のすすめ:3

街なかの人口が減少し、郊外の人口が増加する人口移動現象をドーナツ化現象と言います。
ドーナツ化は次のような段階を経て進んでいます。

まず、郊外住宅団地開発等に伴って、郊外や国道沿いに大型店舗等が出店します。
公共交通機関が充実していないので、郊外住宅地居住者の買い物や通勤は、車に依存する生活スタイルが一般化します。
すると、中心市街地の通勤者向けに街なかの駐車場需要が旺盛になります。
街なかの居住者減少による需要減退と、郊外の大型店舗との競合により、街なかの店舗が減少していき、街なかがいわゆるシャッター街とも言われる状況になっていきます。
シャッター街化することで、ますます街なか居住の魅力が低下していき、店舗跡地等が駐車場になっていきます。
その事が、さらに居住者減少に拍車をかけ、街なかの店舗減少を誘引します。
この悪循環がどんどん進み、街なかの空洞化が加速度的に進んでいるのが現状です。
この過程において、車への依存度は深まり続けています。


このままでは、歩いて暮らせる街が失われてしまいます。
現在、高齢社会が急速に進んでおり、車が運転できないと暮らしていけないという状況は、非常に危険だと言えます。

2013年4月2日火曜日

街なか居住のすすめ:2


地方都市では、近年急速に街なかの衰退が進んでいます。
鳥取市では平成15年から平成19年の4年間に、なんと2ha以上も街なか、いわゆる中心市街地における空地と駐車場の面積が増えています。その後の調査でも、このスピードはさらに加速している状況です。


また、昭和40年代には鳥取市人口の約20%を占めていた街なかの人口は、平成18年には6%まで減少しました。
このように、街なかの衰退が、加速度的に進んでいるのが、日本の多くの地方都市を取り巻く原状ですが、県庁所在地の中でも最も人口が少ない行政の一つである鳥取市では、最も先鋭的に状況が進んでいると考えられます。

2013年4月1日月曜日

街なか居住のすすめ:1

先日、鳥取市でシンポジウムが開催されました。
そこで行った基調講演の内容を、公開していきたいと思います。