2022年3月20日日曜日

定期借地権で実現できる豊かな住生活

 先日開催された、定期借地推進協議会、「二地域居住×定期借地」をテーマとしたシンポジウムで講演した内容を紹介します。

【オンライン開催】不動産・地域活性化シンポジウム2022「二地域居住×定期借地権」~豊かな住生活の実現を進めるために~ - お知らせ - 定期借地権推進協議会 (teikishakuchi.com)

 本日は、定期借地権で実現できる豊かな住生活というテーマでお話させていただきたいと思います。

 本日のテーマであります二地域居住を実現するためには、都心部及び郊外、双方の魅力を、より上げていく必要があるのではないかと考えておりまして、それには定期借地権が有効なのではないかと考えております。

 近年でも、私共は定期借地を活用した事業を行っておりまして、その実例を通して、そこから派生して色々な事がわかってきました。それらの事をご紹介させて頂いたり、現在考えている事をご紹介させて頂いたりさせていただければと考えております。どうぞよろしくお願い致します。

定期借地権の可能性を様々に考えているのですが、その中で、今回は3つのテーマに基づいてお話させていただきたいと考えております。

一つは京都の事例です。一団地申請を活用して魅力ある街並みを構築したいと考えていたのですが、その一団地認定を得るために、環境を将来的に担保する方法として定期借地権を活用できるのではないかと考え、京都市と協議して、京都市では今まで前例の無かった民間事業の一団地認定での事業を実現したのが、宇多野コーポラティブハウスというプロジェクトです。このプロジェクトを通して、定期借地権の可能性に気付かされると共に、区分所有法の活用がさらに拡大できるのではないか、テラスハウスは今まで考えられていた以上の可能性を持っているのではないかと思い至ることができました。

二つ目は、具体の事業を通じて、景観コントロールそのものが物件の魅力向上につながるのではないかということで、具体的に京都及び神戸で実現した事業のご紹介をさせていただきます。このような方法を用いることによって中心市街地及び郊外共に魅力を向上させていく可能性があるのではないかと考えてます。

さらに三つ目は、これらの事業を踏まえて、公有地の有効活用につなげていけるのではないかと考えております。鳥取、神戸での取り組みを通じて、どのように定期借地権を活用すれば本来の地域の魅力を再生していくことができるのか等をご紹介させていただきます。

それでは、まずはじめに京都で手掛けた宇多野コーポラティブハウスの話をさせていただきます。

この物件は、京都市右京区にある仁和寺のすぐ近く、近傍には龍安寺や仁和寺等の古拙が点在している地域にあります。航空写真の赤線で示したところが敷地ですが、敷地の北側に隣接して天皇陵があり、地域は緑に恵まれた環境にあると言えます。ただ、この敷地形状を見てわかるように典型的な旗竿敷地で、接道は右側に伸びている竿の部分が東側道路に接面しているだけで、西南の国道162号線(通称:周山街道)は比較的広幅員の道路ですが、そちらとの間には5m程度の高低差があり、道路敷の法面部分が国有地で木々が生えており、敷地自体は直接周山街道には接面していませんでした。

地主からこの土地の有効活用について相談を受けましたが、この土地は400坪以上ある比較的大きな土地ですが、元々一軒家が建っており周りは庭でした。先代が亡くなられてから貸し出されたりしたこともあったんですが、その後長年そのまま放置されており、所有者の方が仕事の関係で遠方に居住されているということもあり、この土地はジャングル状態で長年放置、手つかずの状態になっており、固定資産税だけ払っている状態でした。

ただ、地主自身が近々定年を迎える状況で、子供たちに負の財産という形で残すのではなく、何か利益を生み出す資産として継承したいということで相談を受けました。当初は売却も考えましたが、この土地形状が示す通り土地利用の難しい土地なので値段がつかず、活用の方向に舵を切られたというふうに聞いております。

これが敷地図ですが、道路には東側に伸びている先の部分で接面しており、竿部分が総長36m程度あって幅員が4mを切っているということもあり、通常で考えれば一軒家しか建てることが出来ない、敷地規模を持て余す土地でした。周山街道に面しては紫の線で描いてあるところが国有地の法面で、道路敷ではあるけれど道路ではないので道路接面が認められない土地でした。

これが周山街道側からの写真ですが、市バスよりも高い所に土地があります。国が所有する道路敷の法面に非常に大きな高木が生えているのが確認できます。

これが東側の道路接面部分ですが、前の道路を歩いていても敷地がどこにあるのか気付かない、ややもすると通り過ぎてしまうような状態で、上の写真に赤い矢印で示している所だけが接道しており、そこから敷地方向を見たのが下の写真。奥の方のこんもりとした森のような所が計画地となります。

四重苦に苛まれた土地で、一つ目の厳しい条件としては旗竿敷地で接道条件が非常に厳しく、竿部分が長さ36mの幅員3.6mということで、現状のままでは従前住宅と同用途、同規模の建物しか建てられない、すなわち一軒家しか建てられない土地でした。

二つ目の厳しい条件として、敷地内に2m程度の高低差がありました。この土地の地盤面を加工する為には開発許認可が必要で、開発許認可に必要な接道要件を満たしていないので土地現況を生かした計画が求められました。

三つ目にこの地域は風致地区と景観条例の対象に指定されていて、非常に厳しい高さ制限があるとともに、風致地区の規制で隣り合う外壁の角度は直角でなければならない、斜めに壁をつなげてはいけないという規制がありました。

四つ目に、周山街道との高低差が大きいので、崖条例により崖の高さの2倍の水平距離まで建物を後退させる必要がありました。

事業化するにはこれらをクリアしていかなければならないということで、周山街道に対して敷地内で高さが下がっていく部分があったので、オレンジの部分まで通路を下げていけば、あと一息で周山街道に出ることができるということで、その部分の幅員が2m以上あれば周山街道を接道として認めるという判断を京都市にくだしてもらうことができました。

この事により、サブ動線として敷地を通り抜けることができる状況を確保することができました。

京都市としてはほとんど認めてこなかった一団地認定を認めてもらうにあたって、今回定期借地で事業をするということで、定期借地の原契約の中に、その後の増改築に関するルールを盛り込めば継続的に良好な土地活用が行われ、周辺環境との共生ができるということで、京都市に一団地認定を認めていただくことができました。一団地により建物を分棟化することにより敷地内の高低差を処理するように考えました。

このように分棟化することで、結果として建物が一つ一つが直角で構成された建物でありながら、斜めに配置するなどして、変形敷地にもかかわらず、敷地全体を利用して有効に活用する事ができました。建築確認上は4棟の建物を配置する形になっています。

崖地に関しては、基礎を安息角まで根入れすることで崖に近い所まで敷地全体を活用する事ができるようにしました。具体的な手法としてはRC造の地下階を設置するなどして、安息角まで根入れする計画をしています。

このような条件を踏まえて計画したのが、こちらの絵のような配置です。真ん中の広場を囲むような形で4棟を配置し、北側の1棟は地主保有の賃貸住棟としました。

本プロジェクトは分譲事業として一般の方々に販売しているわけですから、このような技術的工夫を購入を検討する方々に説明してもあまり意味の無い事で、実際どのような環境で住むことができるのかという事の方が重要です。

そういう視点から、もう一度この計画の魅力を見直して、それをアピールすることにしました。この丸印が対応している者なんですが、

①北側に隣接する御陵と緑を連坦し、緑豊かな自然を確保しました。

②敷地内の高低差の生じている法面部分に主に大木が生えており、既存樹木を生かそうということで、それをそのまま法面の所に残し、それを避けるように住棟を配置しています。このように、生態系と緑の保全が図れるように計画しました。

③真ん中の広場を囲むように屋内駐車場を5台、屋外駐車場を2台確保し、

④旗竿の竿にあたるアプローチ形状がもたらす心理的バリアにより、街区の持つセキュリティを確保しつつ、地域にやさしく開かれた配置計画を行っていると説明しました。ここに用事のある人は特に問題なくこの通路を歩いて行けるわけですが、関係のない人が入っていこうとすると、中に入ったとたんに全住棟から見張られるような広場に出てしまうという事で、非常にセキュリティ効果が高いと考えております。

⑤大きな空地を囲むように配置することで各棟の独立性を確保しています。このように配置すれば近接距離で窓が見合うような事を避けることができます。

⑥各分譲住戸に緑豊かな専用庭を配置しました。全ての住戸が真ん中の広場とは反対側に専用庭があるわけですが、左側の南面が国所有地ののり面で、そこに生える大きな大木等をのぞむ形となり、各住戸に緑豊かな専用庭が配置できるような計画になりました。

⑦周山街道沿いの緑地帯を活かし、沿道の喧騒を遮断し、緑に囲まれた環境を実現しました。実際に住戸に入ると、どの窓からも緑の梢が見えるという、京都の都心部では考えられないような自然環境に恵まれた計画ができました。

⑧地域の街並みに溶け込む低層設置型で、既存地盤の高低に沿って分棟化して配置した計画を行いました。

この事業を事業的な視点から見ますと、敷地面積約1400㎡の所に賃貸住戸6戸を2500万円の資金投下で取得した形になります。

2500万円の資金投下で月額30万円以上の収入を得、月額の地代収入と合わせて年間500万円程度の収益を生むような事業にすることができました。

投資利回りとしては年間20%の利回りが確保でき、相続税対策としても有効な事業にすることが出来たのではないかと考えております。

これが生まれ変わった建物の入り口のアプローチ部分で、ここを入っていくにはかなり勇気がいります。見に行かれた方も、ここに入っていくのはなかなか勇気が必要だと皆さんおっしゃってます。そういう意味では実質的なセキュリティ効果はかなり高いものが得られたのではないかなと考えております。

これが中庭から見た写真です。

真ん中の広場を囲む部分に大木があるので、視線を遮る効果として生きております。

夜になればこんな感じ。

京都の宇多野という風光明媚な場所に位置しているので四季折々の変化を感じることができます。右上の写真は冬に積雪した時の情景、右下は春の情景ですが、実は真ん中の大木は桜の大木です。御室仁和寺は御室桜の有名な土地ですので、通常京都の桜のシーズンよりは半月ばかり桜の開花時期が遅れるわけですが、それらを全ての住戸から愛でることができる環境となっております。左側の写真が地下室を作った住棟の所で、法面を利用して周山街道に至る遊歩道の写真です。

このような事業でしたけれども、国土交通省長期優良住宅先導的モデル事業というのが当時募集されていまして、それに応募することで採択していただくことができまして、補助金も得て非常に良い事業になったのではないかと考えています。

ちなみにこの事業は同年のグッドデザイン賞も受賞しました。 

宇多野コーポラティブハウスを見学に来た京都のディベロッパーの社長には非常に気に入って頂きました。環境共生が一般に評価されるかどうかわからないので、コーポラティブハウスという先行募集型の事業でプロジェクトを手掛けたんですけれど、実際蓋を開けてみると、募集時期がリーマンショック直後で、どこも不動産屋が閑古鳥と言うときに、大勢の方々に関心を持っていただき、実際参加していただいた方々も京都大学や立命館大学の教授や准教授など学識経験者も多く非常にアカデミックな住民層になったわけですが、そういった潜在ニーズがあるという事をわかって、京都のディベロッパーが新たに取得した土地で同様の事業を構築することになりました。

それで手掛けることになったのが、京都の華り宮嵯峨二尊院で、こちらも宇多野と同じく風光明媚な場所にあります。

こちらは第一種低層住居専用地域、歴史的風土保存区域で第一種風致地区ということで、非常に多くの制約のある立地でした。

まわりは、このような古拙に囲まれた立地になります。

 

風致地区だという事もあって、許容建蔽率が20%、許容容積率が50%と非常に条件の厳しい立地で、この写真の突き当りの緑の所が計画地になります。

これも開発不適地だったので道路を通して宅地開発することが非常に難しく、宇多野と同じような計画をしてくれないかという相談でしたが、ただこれは宇多野の様に定期借地ではなく所有権分譲でやってほしいとのオーダーでした。

宇多野は一団地認定をクリアする方法が定期借地の活用だったのが、違う形でクリアする必要があります。様々に検討した結果出てきたのが区分所有法で団地管理させるという方法でした。団地管理することで一団地認定をクリアすることができるのではないかと思い至り、事業を進めました。

計画したのが総12戸で、6棟の2戸1住宅が点在するような計画となっております。

これが出来上がった物件ですが、道路面からゲイテッド化することで開放的な住棟を分散配置しました。

広い敷地の中に、緑豊かな環境の中、住棟は分散配置されています。


 セキュリティーラインが外周にあるということもあり、非常に開放的な住戸となりました。

京都の街中で京都らしい風情のある住環境を得ようとしてもなかなか得ることができません。このやり方は、京都らしい風情のある住環境を得るための一つの方法を提示することができたのではないかと考えています。

この事業を進めていた時に、神戸は北野の異人館街の中でも同じような話がありました。当初マンション計画があがっていたのですが、地域で反対運動がおこっているということで、そのマンション計画自体は頓挫したのですけれどもその跡地をなんとかしてほしいという話になりました。

この赤線で囲んだところが敷地で、これもかなり変形土地ですけれども、先程と同様、総12戸で2戸1住宅6棟からなるテラスハウスを分散配置し、異人館街の街並みに合う街並みを作ればそれ自体が新たなる価値を生み出すのではないかという事で事業を進めました。

これが竣工写真ですが、ゲイテッド化することでセキュリティが確保でき、分散配置する間に緑を入れることによって地域の街並みと共生していく事ができると考えています。


 全体像はこんな感じ。


 自らの建物自体が、自らの景観の中に入り込んでくるというプロジェクトです。


 これらのプロジェクトを通じて、景観が価値を生み出す、景観そのものが分譲するときの価値としてみなされるということに気付きました。


 様々な事例を調べている中で、イギリスのレッチワース(ハワードの田園都市構想の最初の事例として有名な街です)が、100年以上経っても当初の街並みが維持されている事に着目しました。

日本のニュータウンの原型と言われていますけれども、あまりにも違うのは何でだろうと色々と調べていくと、レッチワースは第一田園都市会社の借地という形で当初から計画されていたことがわかりました。このことが一つのキーになっているのではないかと感じております。

もう一つ、日本でも祇園町南部地域が景観が維持されている事例として見つけることができました。こちらは都市計画地図なんですけれども、真ん中に横(東西)に走っているのが四条通りです。四条通りの北側も南側も四条通沿道は容積率600%ですが、そこから外れた所は容積率400%ということで商業地域が広く広がっています。

ところが、こちらの写真を見ていただくと、左側が四条通の北側、右側が四条通りの南側の航空写真ですが、この航空写真からも明らかなように全然雰囲気が違います。

街に入ると、こちらは同じ花見小路の四条通りの北側と南側の写真なんですが、北側はよくある繁華街のどこにでもある街、南側はいかにも京都らしい祇園の風情のある街になっています。

路地に入っていっても同じような違いがあります。何が違うかというと南側は八坂女紅場学園という学校法人の借地になっていることが違いとして挙げられます。

 


このあたりは平成14年に地区計画決定されましたが、はるか以前からこの街並みの違いはありました。平成14年の地区計画決定というのはこの街並みを保全するというよりも、むしろ残されている一部二項道路で建替えする時に中心後退することにより街並みが崩れないように緩和する方向で定められた地区計画だったと聞いております。

魅力的な居住環境を創出すれば、これらのように景観が価値を生み出すことも考えられます。

持続的に景観をコントロールする手法としては二つの方法が考えられます。

一つは借地権の活用、定期借地権でも良いのですが、借地権原契約に景観をコントロールするルールを盛り込むことによって景観をコントロールできるのではないかと思います。この場合建物に制限はありません。

もう一つに区分所有法を活用すれば団地管理規約に景観をコントロールするルールを盛り込むことが出来ます。ただしこの場合、コントロールできる対象は区分所有建物に限定されます。

以上のように、景観が価値を生み出す為には、持続可能な私権制限が必要なのではないかと考えております。

これらの知見を何らかの形で活用できないかなと考えていた所、鳥取市が中心市街地の再活性化に向けて市有地を活用して街中に人口を取り戻すプロジェクトを実行するという事で呼ばれました。

 鳥取市は、街中がどんどん駐車場化して人口減少に歯止めがかからず、郊外に大型店舗が出店したら、その周辺に住宅地が開発されて、そこから車で都心に出来た駐車場を利用して通勤するという生活スタイルが進んでいました。

このままでは、歩いて暮らせる街が失われてしまいます。高齢社会が進展していくと車が運転できなくなると暮らしていけない街になってしまうのではないかと、鳥取市は非常に危機感を募らせています。


 そこで、鳥取市が所有していた市有地を定期借地で住宅分譲するモデル事業を行い、中心市街地の土地を所有している地主たちが同じように街中に人口を取り戻すような事業を行い街の活性化を進めていく呼び水となる働きかけをすることになりました。このモデル事業で事業化した住宅は戸建てですが、定期借地の原契約の中にルールを盛り込むことにより一団地認定を使い、コモンスペースを囲む配置で住む魅力を向上させる工夫をしています。

もう一つは、神戸市が市営住宅を集約化していく中で跡地活用を色々と模索している中で、神戸市からの調査業務の中で私共が提案しているものを紹介させていただきます。写真を見て頂いたらわかるように、神戸市のニュータウンもよくあるニュータウンでびっちりと家が建ち並んでいて、ニュータウン内に入ると非常に緑が少なく、せっかく郊外に来たのに、郊外の最大の魅力である緑を感じることが出来ません。

整備方針の方向性を考えるにあたり、ニュータウン集約化後の跡地活用の方向性を神戸市も全市的に模索している状況の中で、ニュータウンが構造的に抱える問題の解決に繋がる方針の立案が望まれています。

私共が分析したニュータウンの抱える課題をピックアップすると、高齢化や空き家・空き地、商業施設の撤退、人口減少、一代限りの街、交通不便、地域の明るい将来像が見えないということで、恒常的なニュータウン衰退傾向の予感があり、これによって人口流出が止まらないという状況になっていると思います。神戸市は日本の地方自治体で最も人口減少数の多い行政の一つであると言われています。

これをなんとかするには、職住分離型、人口増加時代、専業主婦時代につくられた街の姿からの転換が必要であるり、そのためには「住んで・働いて・憩う」地域生活の域内完結力の向上が必要ではないかと考えています。

このようにまとめて思い返すと、「住んで・働いて・憩う」地域生活というのは、実はレッチワースの計画には当初から入っていたものなんですね。ニュータウンというのはハワードの田園都市構想を渋沢栄一が日本に持ち帰ってきて展開したと言われていますが、実は日本のニュータウンは純粋な住宅地に特化しすぎていて、元々持っていた「住んで・働いて・憩う」という都市が本来潜在的に持っている都市の本質が、どこかで抜け落ちてしまったのではないかと感じております。

神戸市はかなり特徴的な行政で、神戸市内だけでも50団地・50万人、神戸市民150万人の内1/3にあたる人口がニュータウンに居住しておりますが、西区や北区に、オールドニュータウン問題を抱える地域は集中しており、昭和40年代頃を境にこの地域の状況はがらっとかわっています。

元々この地域というのは既存集落があって、多くの農業従事者が農業をされていました。

それを昭和40年代以後、ニュータウンがこの地域に作られ、産業団地も数多く作られました。しかし、これらすべてが従前の地域資源と背中合わせの併存になっていて、ここをつなぐ方法が、この地域の再活性化につながるのではないかと感じております。

そのような方法を今後見つけていかなければならないと考える中で、一つの方向性として我々が提案したのが、大都市近郊の自然に囲まれた生活、郊外暮らしを享受できる街と位置付けてはどうかという提案です。

一つの市営住宅集約化後に生まれる余剰地活用案として、低投資型開発による新自然型戸建て住宅を提案しております。

鉄筋コンクリート造の住棟が立ち並んでいると言っても元々丘陵地を開発しているので非常に法面が多いのが特徴で、今までは宅地開発をするディベロッパーに売却して、宅地造成して戸建て住宅として分譲されることが多かったのですが、そのような事業をするには造成コストがかかりすぎて事業性が見いだされない状況が生まれています。

そんな事業をするのではなく、元々の地形をそのまま生かした形で、低密度で農業なんかもできるようなファームタウン構想で地域の魅力を蘇らせていく事が出来るのではないかと考えています。

実際、神戸のニュータウンは三ノ宮から車で30分圏内の所がほとんどです。非常に街に近いのです。そんな所に、親自然的な居住地を生み出すことが出来れば、これらの街の魅力が蘇ってくるのではないかと考えています。

とにかくお金をかけて、開発敷地の隅から隅までを使ってびっしり小さく区画割をしてコンクリート擁壁だらけの街にするのではなく、既に育っている緑はそのまま残し、低密度にすることの方が結果的に商品としても価値が出てくるのではないでしょうか。

公有地を売却する際には鑑定価格を元にした価格になりますが、定期借地を活用すれば それにも縛られない事業計画ができるのではないかなと考えています。

そして50年以上の期間を設けて定期借地をすれば50年後の返還時期にはその時の社会状況に応じて、次の時代の地域活性化の種地としてこの土地を行政が再利用できるような流れに繋がれば良いのではないかという提案をしています。

このように、大きく三つの可能性が、定期借地の可能性を広げることに繋がるのではないかと感じております。そして、その事によって都心部、郊外共に魅力をアップすれば、実際に具体的に二地域居住を進めることに繋がるのではないかと考えております。

以上です。長時間にわたる視聴ありがとうございました。