過去にいくつもの弊社が企画したコーポラティブハウスの施工をしていただいたことのある村上工務店の会社報「まごころ:vol53」に掲載されたインタビュー記事を紹介します。
ライフスタイルの多様化に合せた”コーポラティブハウス”という住まい方
自らがアクティブに働きかける提案型の設計ができないか?
集合住宅の構築そのものにまで関われる取り組みができないか?
その想いの末にたどり着いたのが、住まわれる方々のライフスタイルに合わせた『コーポラティフハウス』という住宅事業。
多様化するニーズに応えた住まいを提供する株式会社キューブ代表取締役の天宅毅様に住まいづくりに対する熱い想いをお聞きしました。
ライフスタイルの多様化に対応しうる住宅事業がまったくない日本
『コーポラティブハウス』とは、実際に住まわれる方々が共同で土地を購入し建築していく住宅システムのこと。海外では一般的なのですが、日本では1970年代に細々とはじまり、大きなムーブメントになることもなく、現在に至るまで色々な場所で実験的に取り組まれてきました。事業実績としては結構な数が提供されてきていますが、全体的な住宅供給からするとわずか。一般の方々への認知度もまったくあがっていないのが実情です。
趣味噌好やライフスタイルの多様化が進んでいるにも関わらず、日本の供給住宅は3LDKや4LDKといった類型化されたプランニングのものばかり。そういう従来の枠に納まりきらない住まい方を希望する方々のニーズを受け入れられる事業も選択肢もまったくありません。そのため、“ライフスタイルに合わせた自由な住まい”は夢で終わり、大半の人が実現することができないのです。
多様なニーズに応えるということは、一戸一戸違う家を造っていくということ。個別に設計をし、家ごとに違った間取りや仕様に対応していかなければなりません。供給者側であるデベロッパーにかかる大きな負担、高度な現場管理と技術レベルが求められる工事に対応できる工務店の少なさ、それらが事業の普及を妨げ、ほとんとやの人がマンションを注文住宅のように建てるなんであり得ない、そんなことができるとすら思わない現状を作っているのですo
従来の間取りがもたらした家族関係の弊害
通常のマンションは3LDKや4LDKなとや部屋が固定化されています。そのなかで皆さんは、子どもが2人いるから4LDKという感じに漠然と考えていらっしゃいますが、自由設計というカタチで住まいづくりに関わると、間取りひとつをとっても家族関係をどういう風に保とうとしているのかといったところまでかなり突っ込んでお話をしていくことになります。すると、従来のマンションの間取りに合わせて住もうとすると、部屋の間取りに合った家族関係になるんじゃないか、部屋に鍵がついているから親子関係にも心に鍵がかかってしまうんじゃないか、大きい部屋を作り居心地のいい子ども部屋を与えることが結果的に引きこもりになったり独立性を損なった大人になってしまうことにつながっているのではないか、といった問題意識を持っている方がとても多い。だから、家づくりにおいても、リビングを通らないと子ども部屋に入れない間取りにしたい、毎日顔が見れるような状態で子ども部屋をつくりたい、部屋に鍵はつけたくない、といった声をよく聞きます。
そういったお話を聞きながら、今まで、ほとんどの人が当たり前だと思っていた、3LDKや4LDKといった住まいがもたらした弊害というものが、思っている以上にあるように感じています。
生き方や人生を見つめ直す住まいづくり
人口が減っていくなかで、住宅ストックはすでに充足。需給のミスマッチを解消する方向でしかニーズが生まれてこないような状況で、今までのような少品種大量生産型の住宅供給の必要性はまったく失われていくことが明らかです。今後は、多様化しているニーズの受け皿になりうるような多品種少量生産型の住宅をどうやって仕組み化していくか、ということに絞られてくると思います。そういうなかで家作りに関わるということは、その人の生きてきた人生に向き合うことになり、その後の人生にもいろんな意味で影響を及ぼすということ。コーポラティブを企画することで、参加される方々が普通のマンションを買うときには考えないような“自分自身の生き方”や“自分の人生”をもう一度見つめ直す機会になったり、その人自身の生き方が変わるようなことにつながることがあればすごいことだし、そういう仕事をしているという自覚と責任を持って取り組んでいきたいと思っています。
家を買うということは人生のなかでも大きなこと。それを今は気軽に選びすぎているような気がします。でもそれは、選んで買うしかないという状況だったから。自分自身で作り上げていくという選択肢があるということを、もっともっと世の中に発信していくことが、今の一番大きな課題だ、と思っています。
プレゼンは下手だったけれど“真面目で実直な提案内容”が決め手に
村上工務店さんには、弊社事務所をはじめコーポラテイブの工事などをお願いしています。一番印象的だったのは3年ほど前の東灘区のマンションの長期修繕。実はこのときの選定コンペでのプレゼンがすごく下手で(笑)。ただ、このマンションの人たちは震災後に建て替えを経験してきているため、住民全員が内容を重視した結果、村上工務店さんに決まったんです。提案内容はどこよりも真面目で、実直、すごくよかった。でもだからこそ、もっとプレゼンを磨いた方がいいなと、条件的にいくら勝っていてもプレゼンで比較されたら損をしてしまうよ、と現社長に何度もお話しさせてもらいました(笑)。修繕委員の皆さんからも「中身だけではうち以外では絶対取れないよ」と(笑)。ただ、改修専門業者はプレゼンは上手ですが、残念ながら実際の建物を作っているわけではありません。本当のものづくりの観点からいうと、工務店のように全般を見ていて、かつ新築工事の経験が豊富なところの方が絶対に技術力は高い。コスト的に変わらないのであれば、そういう経験のあるところを選ぶというのは妥当性の高い話なんですよね。結果的に、皆さんにとても喜んでいただける修繕工事ができました。
絶対にできない工事ができる貴重な存在
コーポラテイブハウスは、高度な施工技術を持つ限られた工務店にしかできない仕事。でも、村上工務店さんのように工事のクオリティが高いとアフタークレームが出ないんですよね。一軒一軒の間取りや仕上げがまったく違う状況でありながらクレームが出ないというのはすごいこと。大手の建設会社や大きいマンションしかやってきていないところには絶対にできません。村上工務店さんは、現場と職人が近いので丁寧な仕事ができる。それ以上に、住む人たちの目線を大切に、個々の強い思い入れにちゃんと応えていく責任感をみんなが持っているからこそ、多品種少量生産であるにも関わらず、高品質でアフタークレームがほとんど出ないものができる。そういう、他では絶対にできない工事ができる力を持っているというのは、我々の事業にとってはすごくありがたい存在です。
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