2012年7月6日金曜日
今までの取り組み(レスタジア南田辺)
長居公園の北側に隣接する老朽化した木賃アパートの所有者から、コーポラティブ方式を活用した建替えの相談を受けました。
長居公園は、東、南、西は大きな幹線道路に面していますが、北側のみ、一方通行の緑道のような公道に面しています。
その公道は通過交通が入り込まないように、車で入ろうとしても経路が限定されるように工夫されており、この道に直接面する北側の地域はまるで長居公園を自分の庭のように取り込むことができる、絶好の住環境を持っていました。
土地所有者の先代が戦後建てられた木賃アパートは、老朽化が進み、長年住み続けている高齢者が数件いましたが、新規入居者を得ることができない状況でした。
この木賃アパートは、先代の所有する土地の上に建設され、親族法人で所有していました。その結果、この親族法人は借地権を保有する形になっていました。
さらに北側1/3程度は第三者に借地して建物が建っており、南端の西側半分に関しては先代の弟が土地建物共に所有している状況でした。
こんな状況の中、先代がお亡くなりになり、法定相続によって土地は親族で共有する形になっていました。
借地権、所有権、共有の権利関係が入り組み、このままでは権利の整理がつかない状況でした。
そこで、北側の借地部分は分筆して事業から切り離し、等価交換でコーポラティブ方式の共同住宅を建設し、それぞれの従前権利評価に応じた床を取得するか、従前権利評価に応じた金員を支払って、従前の権利関係を整理することになりました。
南端西半分の土地建物共に所有されていた先代の弟は、先行して他の住宅を購入していたので、居住用資産の買い替え特例を利用し、転出することになりました。
底地を共有で所有していた親族と、木賃アパートを所有し借地権を持っていた親族法人は、それぞれの評価に基づき、立体買換えの特例を利用して新たに建設するコーポラティブ方式の共同住宅の床を取得することになりました。
いわゆる等価交換を実現する立体買換えの特例は、権利者が個人の場合と法人の場合とで、法的根拠が異なります。
権利者が個人の場合、課税特別措置法37条が適用されます。
譲渡資産の所有期間の制限はなく、従前用途の制限もありません。
従前資産の種類は土地等(借地権含)及び建物、構築物です。
買替により取得する資産の100%の課税が繰延べとなります。
権利者が法人の場合、課税特別措置法65条が適用されます。
この場合、譲渡資産の所有期間は原則5年超で、従前用途は自己の事業用、貸付用等に限定されます。
従前資産の種類は土地等(借地権含)及び建物、構築物です。
買替により取得する資産の80%の課税が繰延べとなります。
この制度を活用して、底地を共有していた親族、借地権を持っていた親族法人それぞれで別区画を保有し、将来分離処分できる状況に整理しました。
大阪市は大阪市民間老朽住宅建替え支援事業を行っており、老朽住宅を建替えて共同住宅を建設する際には補助金が交付される制度があります。
この事業に採択されると、建替え計画策定費、建替え建設費の補助を受けることができます。
要件としては、2以上の土地所有者等が2以上の敷地において、一つの構えをなす建築物を建設する場合で、設計費、除却整地費、空地等整備費の一部、および共用通行部分整備にの一部が補助対象となります。
さらに、従前居住者に対する家賃補助も行われます。
申請の結果、本事業は大阪市民間老朽住宅建替え支援事業に採択され、補助金を得ることができました。
通常、住宅金融公庫の融資は、建物が完成して入居する際でなければ実行されません。
しかし、本事業のように先行して土地取得等しなければならない案件に対しては、都市居住再生融資の中にある初動期資金融資という制度が活用できることを発見しました。
この制度は、制度としては作られているものの、関西での実績は無く、首都圏でも数例の実績があるのみでした。
しかし、せっかく制度としてあるものなので、住宅金融公庫と相談し、この制度を活用して進めることになりました。
この後、住宅金融公庫は住宅金融支援機構となり、融資制度内容が全面的に見直されたので、結果として、本プロジェクトは、この制度を関西で唯一活用した案件となりました。
全体計画としては、南面が長居公園に直接面するという絶好のロケーションを活かして、全戸南向きの計画としました。募集開始当初は専有面積約80㎡の住戸が6戸、約90㎡の住戸が5戸、約85㎡の住戸が2戸の計13戸でしたが、最終的には約50㎡の住戸が4戸(親族法人所有賃貸住戸)、約65㎡の住戸が1戸、約80㎡の住戸が5戸、約85㎡の住戸が2戸、約100㎡の住戸が1戸の計15戸となりました。
非常にバリエーションに富む計画となったので、外観の開口部や壁面形状にもそのバリエーションの多様性があらわれています。
各戸のバリエーションも豊かなものになりました。
3人の幼児のおられるご家族の住まいは、大きなリビングを中心として、各居室にアクセスするプランとなりました。オープンなキッチンからは住まい全体を見渡すことができます。
子供部屋は仕切らずに大きなワンルームとし、将来の成長過程に応じて仕切ることもできるようなプランとしています。
こちらは4階の、成人した親子2人で暮らす住まい。
各個室の独立性を確保して公園に面する南向きに配置し、共用リビングを北側に配置しました。
玄関を入るとすぐに共用リビングが広がります。
しっかりとした広さを確保したパークビューの個室。
シェアハウス的な雰囲気を持っています。
同じく4階の隣の住まい。
大理石を用いた、透明感のある玄関。
隣の住まいの玄関の雰囲気とは全く異なります。
リビングにはくつろげる和室コーナーを設けました。
キッチンスタジアムをイメージした、オブジェのようなキッチン。
最上階は高い天井高を活かした大空間を実現しました。
キッチンと一体化したダイニングテーブルと、薪ストーブが印象的です。
リビングに隣接する寝室にはパークビューの書斎スペースを設けています。
洗面と一体化した浴室。
長居公園は大阪市内でも最も大きな緑地であり、その丁度中央部分に立地するレスタジア南田辺は、近くに幹線道路が走っていないので大阪市内とは思えないほど静かであり、夏場でも窓を開け放すと緑地を経由した爽やかな風が通り抜けます。
200坪足らずという、一般的な分譲マンション事業には適さない小規模な土地ですが、まるで区画整理のように、複雑な権利関係を権利変換によって解消することができました。
このような形でコーポラティブ方式を活用することができれば、非常に意義のある事業として取り組むことができるのではないかと思います。
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