2012年7月13日金曜日

リノベーションについて:5

新しいリノベーションの手法として、定期借地権とコーポラティブ方式を取り入れた方式をご紹介いたします。この方式は、リノベーションを成功に導く鍵となる3つのポイントを劇的にクリアすることのできる、新しいリノベーション手法です。






老朽化したストックに資金投下するにしても、基本的にはオーナーが資金確保しなければなりません。しかし、耐震補強したり、現代のニーズに合わせる為にはかなり大きな資金が必要であり、投資対効果や社会状況の変化を考えると、なかなか踏み出すことが躊躇われます。


そこで、既存ストックに一旦定期借地権を設定し、コーポラティブ方式で分譲し、購入者が耐震補強を行い、個々のニーズに沿ってリノベーションを行う事業を提案します。
このようにすると、既存ストックのオーナーは資金負担をせずに、既存ストックの活用を行うことができます。
さらに、30年以上の期間を設けて譲渡特約付借地権を設定し、50年以上の期間を設けた一般定期借地権と併用すると、将来の権利保全に関しても安心です。
基本的には、中古ストックを活用したスケルトン定借のようなものです。








このようにすると、従前ストック所有者にリノベーション費用の負担がかかりません。
耐震補強を行うことで、優良なストックを長持ちさせることができます。
また、購入者が自らの希望に応じてリノベーションするわけですから、多様化する住宅ニーズに応えることができます。
コーポラティブ方式で先行募集を図るので、事業リスクが少なくてすみます。
定期借地権なので、空室リスクが無く、将来における時代の変化にも左右されません。
事業を進めるにあたり、解体コストがかからず、建設費も耐震補強およびリノベーション費用のみで済みます。
コスト負担が軽くなるため、大規模な改修を前提とした計画も可能となります。
既存ストックを活用するので、環境にも優しい事業です。


このように、オーナーニーズ、社会ニーズ、マーケットニーズすべてに応える事ができる事業ではないかと期待しています。








この方式に関しては、弊社で手掛けた事業ではありませんが東京で実例があります。
近代建築の巨匠:建築家武田五一氏が設計した、大正15年に建設された学生寮、求道学舎をリノベーションした事業です。




東京大学正門近くで建設され、創建当時はモダーンな外観で、最新設備を誇ったこの建物も、時代の流れの中で、若者のニーズに適合しない面も多くなり、平成11年に閉鎖されていました。
その後、当初は、既存建物を完全に取り壊して、新たな建築を作ることが検討されていました。
しかし、できることなら、建築的にも意義のある現存の建物を残したいというオーナーの気持ちが強まり、建物の保存再生を検討することになりました。
調査の結果、幸い建物のコンクリートの状態は驚異的とも言えるほど良好であり、80年近い時を経ても、頑強さを失っていませんでした。もちろん、一部には風化も見られましたが、総体では健全な部分が8割以上もあり、不良な部分を取り除き、新たに鉄筋・コンクリートを投入すれば、新築同様の強度を回復させることができることが確認できました。建物全体としての中性化についても、アルカリ性を回復する液剤を建物全体に含浸させることで、今後60年間、中性化の心配をしないで済むということも確認できました。





土地の権利は現在の土地所有者が持ち、 参加者は定期借地権にて共同(「準共有」といいます。)で借り受けます。参加者は建物を通常 のマンションと同様区分所有し、参加者で結成する建設組合にて耐震補強も含めてリノベーション(修復)します。つまり、「借りた土地」の上に「今ある建物」を ディベロッパーが介在することなく「参加者で再利用する」のです。


本事業では、各区分所有者は地主と60年後に譲渡特約付借地権により建物買取オプションのある期間62年の一般定期借地権契約を締結することになっています。
60年後、所定の金額で地主が各区分所有者から建物を買い取ることもでき、その場合、当該契約はそこで終了することになっています。その後、希望者に対して、地主様兼家主と相場家賃にて2年間の「定期借家契約」を結び、住み続けることができるオプション(ただし、更新なし)も用意されています。ここまで見てくると、この事業はスケルトン定借のスキームと非常に似通っている事に気付かされます。






このようにして、築80年のモダン建築がマンションとして甦りました。
このプロジェクトは大きな注目を集め、新聞でも紹介されました。
このプロジェクトによって実現された手法は、様々に応用することができると思います。
この手法を応用して、老朽化した既存ストックを優良ストックに生まれ変わらせていく事業も、積極的に取り組んでいきたいと考えています。













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