2012年5月30日水曜日

管理について2

管理関連費として、管理費とは別に、修繕積立金があります。
修繕積立金とは、将来必要となるマンションのメンテナンスに備えて、予めその費用を積み立てておくものです。
一般的にマンション引渡時に修繕積立基金として、そして引渡後は毎月修繕積立金として徴収し、合算して管理組合名義の口座に積み立てていきます。

マンションを快適で安全な住まいとして維持し、大切な資産としての価値を保つためには、共用部分について計画的な修繕を確実に実施していくことが必要です。
共用部分の修繕は、区分所有者が共同して費用を負担するものであり、日常生活にも大きな影響を及ぼしますから、区分所有者などが協力して行う必要があります。

しかし、一般の管理組合では、大規模修繕を実施するための専門的な事項に関しての知識やノウハウが不足していることから、管理会社や施工会社任せになってしまうようなケースも多く見受けられます。

以上のことから、住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)が、大規模修繕に取り組もうとしているマンションの管理組合向けに、大規模修繕を行う際の手順や区分所有者のスムーズな合意形成を得るための留意点、管理組合が最低限情報を把握し、主体的に判断すべき事項など、大規模修繕を成功させるためのポイントをまとめた「大規模修繕マニュアルPLUS~マンション再生のためのサポートガイド~」を作成し、販売しています。
(過去に住宅金融公庫が販売していた冊子のデータであれば、http://www.jhf.go.jp/customer/kanri/daikibo_shuzen.htmlからダウンロードできます。)

この冊子はよくまとめられているので、分譲マンションに住まれる方全員に機会があればご覧いただくことをお勧めいたします。
目を通して最初に気づくことは、管理組合が自立して、いかに主体的に判断、行動することができるかが非常に重要であるということです。
管理組合が自立して、主体的に判断、行動できなければ、大規模修繕を成功させることはできません。
成功したように見えても、実態としてはそうでない事が良くわかります。

管理組合が自立して、主体的に判断、行動するためには、管理組合が機能していることが必要です。
管理組合が機能するためには、最低限のコミュニティーが機能していることが必要です。
しかし、一般の分譲マンションにおいて、最低限のコミュニティーを機能させることが難しいことは、今までご説明してきたとおりです。
本来管理業務の受託者であるはずの管理会社に、発注者である管理組合がコントロールされている分譲マンションも少なくありません。
そんな状況では、大規模修繕を成功させることは不可能です。
成功したように見えても、実態としてはそうではありません。
コーポラティブハウスにおけるコミュニティー形成は、大規模修繕の面からみても、マンションを健全な状態で維持・管理・運営する為には非常に有効なのです。

コーポラティブハウスは規模がコンパクトなので、修繕費用が高額にかかるのではないかと、よく質問されます。
しかし、大規模修繕工事を行った際の戸当たり負担額の実績を見ると、大規模なマンションとあまり変わらない結果が出ています。
これは、一般の分譲マンションにおける大規模修繕の多くが、成功したように見えても、実態としてはそうでない事の現れではないかと感じています。

1990年代に、中古マンションの融資条件を決定する上で修繕積立金の積立状況を評価するように住宅金融公庫が指針を出しました。
それまでは、分譲時の購入者負担額を少なく見せかける為に、修繕積立金を極端に低く抑えているものが大半でした。
ディベロッパー(売主)の瑕疵担保責任期間である2年を過ぎた頃を見計らって、管理会社が将来のメンテナンスの為に、修繕維持積立金の増額を提案することが広く行われていました。
いわば、ディベロッパーと管理会社の連携プレイです。
管理会社の雇い主は管理組合であり、本来管理組合の利益の為に動かなければならないのですが、新規事業を回してくれるディベロッパーの利益の為に働く、背信行為が当然のように行われていました。
しかし、限度額近くまでローンを組んでいる購入者にとって、月々支払わなければならない修繕維持積立金の増額は難しく、合意形成を得ることができないマンションも少なくありませんでした。
その結果、必要なメンテナンスを行うことができず、健全性を維持できないマンションが大量発生し社会問題化しました。
こんな状況を受けて、住宅金融公庫が指針を出したのですが、多くのディベロッパーが、分譲マンションの修繕積立金の設定を、住宅金融公庫の指針に沿った額に変更しました。
(現在でも初期設定の修繕積立金は低額のままの社会性の低いディベロッパーも存在します)
住宅金融公庫の指針により、新規に供給される分譲マンションの修繕維持積立金の積立状況は劇的に改善されました。

ところが、修繕積立金は現金で積み立てられ、その資金管理は管理組合に委ねられている状況です。
そして、多くの管理組合が、自立して、主体的に判断、行動できない機能不全に陥っています。
規模の大きなマンションでは修繕積立金の額は、なんと億単位になります。
億単位の現金を、機能不全の管理組合が管理している状況は恐ろしくありませんか?
分譲マンションの規模が大きければ大きいほど、修繕維持積立金の額は大きくなり、区分所有者の数が多くなるので、管理組合が自立して、主体的に判断、行動することが難しくなります。
これは、分譲マンションが宿命的に持っている問題の一つです。

キューブでは、そのような懸念をいだいていたので、大規模修繕の実態を掴むため、要請があれば大規模修繕の設計・コンサルティングも行ってきました。
実際に大規模修繕の設計・コンサルティングを行ってみて、やはり一般的に知られているよりも、かなりコストを絞り込むことが可能であると実感しました。
非常に事態は深刻であるように感じています。

大規模修繕の発注者は素人なので、プロがコントロールするのは簡単です。
見掛上見積合わせをしても、本当に競争が起きる環境を作らなければ裏で談合が行われます。
談合に、プロが加担する可能性も排除しなければなりません。
非営利法人と言えども、構成員が営利目的の営業窓口として利用している可能性があります。
マンションの大規模修繕は日本中の分譲マンションが対象であり、市場規模が非常に大きいので、様々な罠が巧妙に仕掛けられているように感じています。
住宅金融公庫の指針により、新規に供給される分譲マンションの修繕維持積立金の積立状況が劇的に改善されましたが、この市場は健全な形で成長していないように感じています。
今後、この市場が成熟していくためには、何らかの形で健全化される必要があると考えています。

キューブでは、大規模修繕の設計・コンサルティングを通じて得られた経験を生かし、新規プロジェクトにおいて設計する際も、出来る限り共用部の修繕維持にコストのかからない設計を行うよう心がけております。

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