2012年5月31日木曜日

コーポラティブハウスの可能性について

戦後復興に始まる、高度経済成長期の都市部への急激な人口流入の受け皿として、都市に膨大な住宅需要が発生しました。
旺盛な需要に裏打ちされたリスクの低いビジネスモデルとして、日本の住宅産業は戦後急速に発展・拡大してきました。

世界の経済動向を見ると、70~80年代には先進国では実体経済の成長速度が鈍化。
需要の減退により、既に拡大してしまった経済規模が支えきれず、世界は次第に金融経済を拡大させることにより、市場経済を拡大させ続ける戦略に移行します。
その結果、実体経済と乖離した、桁違いの規模の金融経済が世界を動かす時代へ突入していきます。

この影響により、次第に日本の住宅も、本来の目的から乖離し、金融商品として自己目的化していきます。
住宅が金融商品化するに伴い、収益性を上げるために、商品企画の画一化と計画速度の迅速化に徹底して努力が注がれ、「内容」より「量」の確保が重視されるようになりました。
投資対効果極大化に向けて、日本の住宅産業は、障害となる要素を排除、純化する方向に向かっていきます。
そして、不動産・住宅産業は次第に実需から切り離されていきます。

あまりの乖離に金融政策を引き締めた事により、日本では90年代にバブル崩壊を迎えます。
世界ではその後も金融経済が自己増殖し続けましたが、約20年後に世界規模のバブル崩壊を迎えます。
しかし、既に桁違いに拡大してしまった経済規模を支える処方箋が金融以外に見つからない為、世界はまだ出口を見つけることができないでいます。
冷戦終結で勝利したかに見えた資本主義は、その後、逆に自らの限界を露呈する事となりました。
まさに、現代は神なき時代と言えるかもしれません。

さらに、史上類を見ない猛烈な人口減少の波が日本に押し寄せています。
日本人口の長期推移実績と予測
団塊の世代が次第に生産活動を終えつつあり、生産人口は毎年数十万人規模で減少を始めています。
既に日本は住宅ストックが世帯数を上回る時代に突入したとも言われています。
今まで旺盛な需要と金融経済に支えられ発展・拡大し続けてきた住宅産業が、そのビジネスモデルの根拠を失い大きな転機を迎えている事は間違いありません。

一方で世間に目を向けてみると、一般の方々を対象とした、住まいやインテリアに関する新たな雑誌の創刊が相次いでいます。
また、注文住宅や住宅のリフォームの事例やプロセスを紹介するテレビ番組も数多く製作され、継続的に放送されているものも少なくありません。
これらは当然多くの読者や視聴者が存在するから生じている現象であり、住まいの「内容」に対する関心が広く一般に広がりを見せていると考えても良いでしょう。
何故、ここにきて住まいの「内容」に関心が高まってきているのでしょうか。
日本の住宅産業が「量」を追い求めてきたため、今まで切り捨てられてきた「内容」に関心が集まっていると見る事ができるのではないでしょうか。
「量」ではなく「内容」によって「しあわせ」や「ゆたかさ」を実感することを求めているのではないでしょうか。

個別ニーズに応える多品種少量生産の住まいや、人間関係に焦点を当てたコミュニティービジネスは、事業性が低いとして今まで関心を持たれることはありませんでした。
しかし、近年のIT化によって、事業の可能性は大きく広がりました。
ITは公開性・記録性が高く、コミニュケーションにおけるプロセスの透明性を高めるツールとして非常に有効です。
このツールを活用する事で、多品種少量生産に事業性を持たせる事や、距離や地域を越えたオープンな言論空間を実現するなど、様々に新たなビジネスモデルが登場しています。
この技術を生かして、住宅産業が今まで切り捨ててきたニーズに応えつつ、「しあわせ」や「ゆたかさ」を実感できるようなイノベーションを生み出す事ができないでしょうか。
マスマーケット亡き後、住宅産業が向かうべき方向は、今まで切り捨ててきた(だから多くの人々が未だ満足を得る事が出来ていない)、このような潜在ニーズに応えることではないでしょうか。
今まで避けてきた顧客との接点がイノベーションを生む契機であると捉え直すべきではないでしょうか。

 現在、産業構造は知識経済化し、資産価値は「有形資産」から「知的資産」へ移行しつつあります。
競争力を規定するのは設備・資本等の「有形資産」から、ビジネスモデル・知財・ノウハウ等の「知的資産」に移行し、イノベーションそのものが狭い意味での技術革新から、製品・サービス・組織・ビジネスモデル・デザインの革新を組み合わせるものへと変化しつつあります。
IT化に伴い、オープンな知識創造プロセスも可能となってきました。
産業構造がオープン化し、ネットワーク型に移行するにつれて、知識創造のメカニズムもオープン化しつつあります。

コーポラティブハウスは現在迎えているこれら産業構造変化に対する親和性が高く、私共は「しあわせ」や「ゆたかさ」を実感できる住まい実現に向けたイノベーションを生み出す可能性を実感しています。

0 件のコメント:

コメントを投稿