2012年6月19日火曜日

1000年集合住宅 誕生!:2

1000年集合住宅は3つの柱で構成しています。
3つの柱とは、1.持続可能 2.環境共生 3.セキュリティー です。

まず、1.持続可能からご説明いたします。


持続可能という観点から考察するに当たり、集合住宅の持続可能性と、街並みの持続可能性の2つの持続可能性について考察しています。


まず集合住宅の持続可能性について見てみたいと思います。

老朽化した集合住宅は、基本的に区分所有者全員による意思決定が前提となります。
マンション建替え円滑化法が策定されていますが、基本的に建替え決議には4/5の合意が必要です。
また、大規模修繕も3/4の合意が必要です。
このように、集合住宅の持続可能性は、合意形成を前提として成立していると言えます。
しかし、今までにも何度も申しあげてきたように、合意形成は非常に難しいステップです。
特に、一般的に誤解されているイメージが、さらに状況を難しくしています。

3/4の合意が得られれば大規模修繕が出来るのであれば、もう少し頑張れば4/5の合意ができるのではないか?このように思われている方も少なくないと思います。
しかし、事実は全くそうではありません。

4/5のベクトルと、3/4のベクトルは全く逆方向を向いているので、お互い相反するのです。
建替え賛成の方は、基本的に大規模修繕に反対します。
どうせ解体する建物に対して、資金を投入して大規模修繕を行う意味が無いという理由です。
従って、大規模修繕の反対者が 1/4 未満になる、あるいは建替え反対者が 1/5 未満になる間の状況、すなわち 1-1/5-1/4=11/20 というどっちつかずの状況が過半を占める状況となるのです。この間の状況にある限り、建物は建替えることも、修繕することもできません。
方針が確定しない間は、そのまま放置されることとなります。




こんな状況にあるにもかかわらず、今まで何度も申しあげてきたように、管理組合が主体的に機能しているマンションは少数派です。多くの一般的な分譲マンション住民はバラバラで、本来業務委託先に過ぎない管理会社に逆にコントロールされていることも少なくありません。
このような状況では、円滑に合意形成を得ることは困難です。

建替えの検討を始めると、所有者間で利害対立が起こり、このような状況に陥りやすいようです。
マンション建替え事業は、事業参加者全ての人生に関わる本当に大変な事業です。
阪神・淡路大震災による被災マンションの再建を経験し、マンション建替えの大変さというものを心の底から思い知らされました。
震災によって明らかに安全性の損なわれた建物ですら大変なのですから、ましてや、老朽化マンションの建替えは本当に難しいと思います。
そういう意味では、本当はマンションは建替えせずに、修繕維持により長く使うのが基本であると思います。
その為には、マンションこそ、長期優良住宅であることが求められていると思います。
しかし、地震国日本では構造基準が厳しく、マンションで長期優良住宅を計画することは困難です。
そして、いくら高耐久のマンションを作ったとしても、鉄筋コンクリートは経年劣化により耐力が低下するため、地震国日本で超長期の耐久性を持たせることは困難です。
この点が、数百年単位で地震の起こらない欧米と根本的に状況が異なります。
日本では、超長期の耐久性を持たせたとしても、構造躯体の耐力低下に伴う耐震性低減により、いつかは耐久年限を迎えることとなります。
この時には、一般的なマンションが直面するのと同じ、合意形成の壁にぶつかることとなります。
結局、耐久性の追求だけでは持続可能性を持つに至ることは不可能であり、持続可能なシステムが必要とされているのです。


このように、今までの日本の集合住宅の持続可能性は、絵に描いた餅に過ぎないと言えます。
私どもは、管理組合が合意形成できる、主体的に機能した環境を構築する為に、コーポラテイブ方式は有効であると考え、積極的に取り組んできました。
さらに、合意形成を不要とするシステムであるスケルトン定借にも積極的に取り組んできました。
しかし、ここではこれらの事業を通して得られた経験を基に、さらに一歩進んだご提案をしたいと考えております。


先述のように、集合住宅は、高耐久性の追求だけでは持続可能になりません。
高耐久性の追求だけでは、超長期的に見れば単なる問題の先送りにすぎません。
集合住宅が本当に持続可能性を持つためには、持続可能なシステムが必要です。

通常、マンションで建て替えを考える際には、一棟まるごとで考えざるを得ません。
一般的なマンションでは一棟が数十戸で構成されるため、数十戸で合意形成を得なければなりません。数十戸で合意形成を得る事は非常に困難であり大変です。
そこで、建物を分棟化して、1棟単位を小さくしていくことにより、合意形成のハードルを下げることができるのではないかと考えました。


区分所有法第69条では、複数の棟から構成される団地において、全体の承認を得ることが出来れば、棟別の建替えができるように決められています。
それであれば、棟単位を最小単位である2戸1住宅にしてはどうだろうか?
このようにすれば、棟単位の合意形成は2戸で得ることができます。
団地で承認する基準を管理規約に定めて明確にしておけば、さらに棟単位建替えは容易に出来ることになります。
そして、棟単位でも、構造上独立性を保ち、基準を明確にしておけば、戸別建替えへの道も開けることになります。


一般的なマンションでは、多くの区分所有者が建替えを望んでいても、1/5を超える区分所有者が反対すれば、建替えすることはできません。望むと望まないに関わらず、実は全ての区分所有者は運命共同体なのです。これは昨今急増しているタワーマンションでも状況は全く同じです。



今回提案するのは複数の2戸1住宅からなる団地です。
棟ごとに建替えが可能なので、建替えたい棟から建替えることができます。


長い年月を経ると、当初の建物を大事に使っている棟もあれば、2回目の建替えをする棟、さらに1戸だけ建替えをする棟など様々になります。
このように、戸別更新できるような環境を整えることで、時代の変遷に応じて変化していく柔軟性を担保することができます。
このようにすれば、区分所有者全員が運命共同体というマンションの宿命から脱却できるのではないでしょうか?
一般的なマンションにおける、大人数の合意形成を前提とした維持管理システムと比べると、非常に柔軟でかつ運用しやすい環境を構築できるのではないでしょうか?



実は、ここまで考えてきて、1200年の都と言われる京都の町が、長年都市であり続けてきた状況と非常に似通っていることに気づきました。京都の町は1200年の都と言われますが、1200年前に建った建物はほとんど現存していません。一つ一つは時代の変遷に応じて戸別更新を繰り返しながら、全体として都の骨格を維持してきたのです。そこには町単位の自治・ルールが存在し、それを尊重しつつ戸別更新を繰り返す中で、街並みは熟成されてきたのです。このようなシステムをシミュレーションすることにより、年月を経ることにより熟成されていく持続可能な集合住宅が実現可能となるのではないでしょうか?








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