2012年6月12日火曜日

スケルトン定借事業の実例(宇多野CH:2)

京都市との協議を踏まえて、下記のような基本計画を立てました。


基本的なコンセプトは環境共生です。

全体計画としては、
①一団地テラスハウスをスケルトン定借事業として計画します。
②敷地内に下記2種類の建物を併設します。
    スケルトン定借分譲テラスハウス:3棟7戸
    ワンルーム賃貸住宅:1棟6戸

事業計画としては、
①の事業からは、地代先取方式で得た権利金を②の事業に充当し、地代収入を得ます。
②の事業からは、賃料収入を得ます。

商品企画としては、環境共生を中心に事業の魅力を整理することに致しました。


本事業は、結果的にみると、地主から見た投資利回りとして、年間20%程度を確保した事業となり、相続税対策も行うことができました。非常に土地条件の厳しい敷地における定借事業としては、収益性の高い事業が構築できたのではないかと思います。

メインコンセプトである環境共生をわかりやすく伝える為にどうすればよいか?
言葉でいくら伝えようとしても、なかなか伝わる者ではありません。
そこで、森の中に暮らすヴィジュアルイメージを訴えかけようと考え、このようなチラシを作成し、事業地周辺に配布しました。


事業説明会直前に、事業コンセプトに関心を持ってくれた朝日新聞が、比較的大きく本事業の事を取り上げてくれました。


リーマンショック直後の、市場環境があまりに悪い時期の募集だったので集客を非常に心配していたのですが、説明会は大盛況で、予想以上に多くの方々に事業の事を知っていただくことができました。100年に一度と言われる大不況の嵐の中における事業スタートでしたが、環境共生というコンセプトに、多くの方々に関心をお持ちいただけたのは幸いでした。


本事業はサブプライムローン問題勃発後に検討を始め、事業をスタートしようとした矢先にリーマンショックに見舞われるなど激烈な社会状況の中で進め、募集開始直後に地主様のお母様が逝去されるなど、紆余曲折を経た事業ですが、募集を開始してからは比較的短期間に事業を進めることができ、当初コンセプト通りに完成することができました。


事業内容を検証している時点では、構造計画を鉄骨造で考えていました。
これは、長期耐久性の高い建物を建設する為には、錆びさせなければ耐力低下しない鉄骨造が適切ではないかと考えていたからです。
しかし、長期耐久性を確保するための客観的基準を何に求めるか検討している中で、国土交通省が提唱する「住宅性能評価」の評価基準が、木造、鉄骨、鉄筋コンクリート等構造種別に依らず、同等の性能を確保するための基準として整理されていることを知りました。そして、同じ耐久性を確保する為に必要な対処について、一般的に採用されている工法に最も近いのが木造であることがわかりました。木造では一般的に採用されている外壁通気工法でも高耐久性が確保できるのに対し、鉄骨の場合、一般的に採用されている防錆処理より大幅に高度な処理をする必要がありました。
さらに当時、原油高騰や北京五輪に伴う資材価格急騰により、鉄価格が急騰していました。
その中で、鉄骨造では収支を組み立てることが難しくなりつつあり、構造をどうするかは最大の懸案でした。
そんな状況の中で「住宅性能評価」の考え方を知り、鉄骨造とする理由であった耐久性確保が木造でも可能であることがわかり、木造に切り替えることに致しました。

木造テラスハウスになった時点で、昔のテラスハウスで問題となっていた遮音性の低さに伴う独立性の低さの解消方法に取り組みました。最終的に、2重壁として、個々を構造的に独立させることにより遮音性を確保する事になりました。結果的に、個別に更新を繰り返しつつ、町全体の骨格を築き上げてきた京町家の構造と良く似ていることに気づきました。この事を踏まえて、長期優良住宅先導的モデル事業に応募したところ、集合住宅部門ではわずか4件しか採択されなかった中の一つとして本事業は採択されました。

激烈な社会状況の中、紆余曲折を経て進めた事業ではありますが、結果的にそのことで、より本質的に純化された事業になったのではないかと思います。

スケルトン定借住宅を中心とした新しい住宅によるまちづくりを支援していくことを目的として、1998年7月6日に「スケルトン定借普及センター」が設立されています。
http://www.skeleton.gr.jp/

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