2012年6月28日木曜日

今までの取り組み(シェヌーア御影)

コーポラティブハウスの可能性を、もっと一般化して展開できないかと様々な可能性を探っている中で、神戸市東灘区の高級住宅地として名高い御影において、約40年ほど前に建てた賃貸マンションの建替えに関して、その賃貸マンションを建設した工務店から相談がありました。



従前の賃貸マンションは先代が建てられたものですが、相談を受けた時点では、法定相続を受けられた4人のご兄弟が共有されていました。ただ、約40年前に建てられた賃貸マンションなので建物の作りが現在の賃貸ニーズとはかけ離れており、1住戸単位が小さく、和式トイレや浴室の仕様など、絶好の立地にも関わらず、なかなか借り手がつかない状態になっていました。借り手がつくようにする為には、相当資金投下してリフォームする必要がありましたが、投資することで確実に入居者が得られる状況ではなく、そもそも4人兄弟で共有している状況ですから、投資資金の負担も難しい状況でした。ただ、場所は非常に良いので、固定資産税評価も高く、保有コストが収益性を上回り、何らかの手立てを講じなければならない状況でした。

従前地主の一族は元々御影周辺の土地を所有され、代々受け継がれてきたようですが、現在のご兄弟はみなさん中部圏に住まわれていました。
先代が亡くなられてから、ご長男が資産管理をしなければならないという事で、神戸に転居してこられていました。
賃貸マンションが建っている状態では資産分割することが難しいので、当初は一括売却して、現金化して分割することを検討されていました。
が、ご長男が代々受け継いできた相続財産は手放さずに継承するべきだと考えられました。

しかし、土地形状から分割することも難しく、ご長男と他のご兄弟の希望を双方かなえることは難しい状況でした。そのような状況で相談を持ちかけられました。

そこで提案したのは、コーポラティブハウスと等価交換を活用した建替えです。
ご長男のみ等価交換でコーポラティブハウスに参加され、他のご兄弟は単純売却で資金を得られる。
このようにすれば、この地に住み続けたいご長男の希望と、換金化したい他のご兄弟の希望を叶える事ができます。
土地が100坪程度しかなかったので、ファミリーマンションを10戸程度しか計画することができず、等価交換で通常の分譲マンションを企画しようとしても事業規模が小さすぎてディベロッパーを誘致することができません。しかし、コーポラティブハウスであれば十分な規模と言えます。

実際に等価交換でコーポラティブハウスを建設することが決まった時点で、次男さんも同様に等価交換で事業に参画され、住戸を取得されることになりました。ご長男、次男さん、お二方の参加になりましたが、それぞれ別住戸を取得されることになりましたので、従前のように共有関係ではなく、それぞれで分離処分できる状況で取得していただきました。

このように、相続で発生した共有関係を解消、整理するためにも、コーポラティブハウスは有効であることが確認できました。

御影のような高級住宅地のお屋敷は、大邸宅であっても100坪から300坪程度であり、分譲マンション事業を進めるには規模が小さすぎます。従って、このような地域は人気があるにもかかわらず分譲マンションはあまり供給されていません。結局細分化されて建売住宅が建設されたり、売却せずに賃貸アパートが建設されたりして、高級住宅地の良好な街並みが崩され続けています。

コーポラティブハウスであれば、このような邸宅跡地の敷地規模でも十分事業化が可能です。
このように、従来の手法では敷地規模とニーズを結ぶ方法が無かったり、地域の魅力を低下させるような形でしか対処できなかった良好な住宅地において、コーポラティブハウスを計画することは非常に意義のあることと感じました。




本事業では、ワンフロア1住戸で取得価格が9000万円以上の高額住戸も発生しました。
それだけの価格であれば、選択肢は様々にあるはずで、何故本事業を選択したのか、当該住戸を取得された方にお聞きしました。

「御影界隈で1億円の予算で戸建て住宅を検討しても、駅からフラットアクセスの範囲では、駐車場を確保すれば庭も満足に取れないような家しか取得できない。さらに窓を開ければ隣の家しか見えない。山を上がればもう少し条件は良くなるが、老後も含めた先々を考えると駅に近く利便性の高いフラットアクセスの立地で家は購入したい。100㎡を超える分譲マンションは極端に値段が乗せられていて高くて話にならない。このコーポラティブハウスの上層階をワンフロアで取得すれば、窓から広々と見渡す眺望を得ることができ、バリアフリーである。さらに1階に駐車場が確保されているので安心。このように考えると、他に選択肢はなかった。」

との事でした。

このようなニーズは潜在的にまだまだ存在すると思います。
まさに、このようなニーズは、今まで住宅供給者側が、住宅供給者の論理で住宅供給をし続けてきた結果、全くフォローされて来なかったニーズではないでしょうか?
そして、そのようなニーズに応えることができれば、コーポラティブハウスの可能性をもっと広げていく事が可能であると思います。


個別設計においては、さらに自由度の幅を広げ、オリジナルでユニークな住まいが実現しました。

こちらはタイル張りのリビングに設けた和室コーナー。
建具デザインを統一し、まるでお店の個室のような雰囲気を持っています。




こちらは、まるで古材で作ったようなキッチン。
一般的なマンションでは、まず採用されない、このような嗜好性の高いものも採用できます。





よくホームパーティーを開き、来客の多い住まいで実現したアイランドキッチン。
床材も天然木の無垢材を採用しています。
基本的に1フロア1~2住戸なので、どの住まいも窓が多く明るいです。




玄関から直接アプローチすることができる和室。
炉を切って、お茶のお稽古ができるようになっています。




グランドピアノのために作った防音室。
メゾネット化して自らの住まいの上に配置し、2重窓や2重壁など、防音化を図りました。




勾配天井を利用してロフトを設け、2人姉妹の寝台を設置しました。
寝台下のスペースは収納になっており、扉の開閉によって2部屋を1つにすることもできます。




寝室に畳コーナーを設けました。




このように、プロジェクトを重ねるごとにバリエーションが増え続けています。
実際に自由設計対応をするなかで感じることは、個別ニーズというのは、最大公約数的に集約化できるものではなく、独自のものであるということです。
そういう意味でも、実際に住まれる方のニーズに応える形で、住まいを実現するコーポラティブハウスの可能性を実感しています。

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