2012年6月21日木曜日

1000年集合住宅 誕生!:4

ここからは、2つめの柱である、環境共生について触れてみたいと思います。

環境共生という柱に対して2つの切り口から取り組みました。
一つは、地盤の起伏をそのままに、緑を極力残し、従前環境を活用した計画。
もう一つは京都市が進める「平成の京町家」の考え方に沿って、環境調整空間と風通しについてこだわりました。

地盤の起伏をそのままに、緑を極力残し、従前環境を活用した計画に関してですが、キューブでは、宇多野コーポラティブハウスにおいて同様の取り組みを行っております。

宇多野コーポラティブハウスはこの航空写真の下の方ある、旗竿形状の住宅跡地で計画しました。従前は420坪もの敷地面積で大きな庭のある一軒家で、従前の緑の豊かさはこの航空写真からも確認することができます。宇多野コーポラティブハウスは、まさに地盤の起伏をそのままに、緑を極力残し、従前環境を活用した計画を行いました。詳しくは、スケルトン定借の実例(宇多野CH)のブログをご覧ください。


敷地中央の広場にある植栽は従前からあった桜の大木です。
建物は分棟化して平らな宅盤の部分に点在させ、斜面の部分の植栽を残しました。
この写真は竣工時の写真ですが、入居する時点でこれだけ立派な植栽が育っています。
元々この土地に自然に育っていた植栽なので、水をやらなくても枯れません。


見る角度によって、様々な緑が目に飛び込んできます。
地盤の高低差や、緑自体が、各棟間の視線の干渉帯として機能し、各住戸の独立性を高めています。


地盤の高低差が街並みのアクセントとしても機能し、雪や花見等、四季折々の季節感を感じることのできる住まいが実現しました。

今回の計画でも、この手法をそのまま活用し、環境共生型の住まいづくりに取り組んでいます。


建物の計画に関しては、京都市が進めている「平成の京町家」の考え方に沿って計画しました。
「平成の京町家」では、「環境調整空間」と「風通し」という2つの大きなコンセプトが提案されています。今回の計画では、それぞれに対して具体的に対応しております。

「環境調整空間」に関しては、「和室」を活用することにより、積極的に取り組みました。
最近の分譲住宅では、京都でも「和室」が採用されないことは少ないようです。
しかし、「和室」は汎用性の高い多目的空間として日本で生まれた知恵の一つです。
西洋の住宅は特定用途に応じて部屋が割り振られています。
しかし、日本の住宅は、いくつもの「和室」から構成されており、住み手の住み方に使い方は委ねられています。従って、「和室」は必要に応じて、居間にも、寝室にも、客間にも変化します。
この多目的空間である「和室」を採用することで、外部との距離感を住み手が自由にコントロールできる住まいを目指しました。

和室とリビングとの距離感をやわらかく保つために、襖ではなく障子によって仕切ることとしています。また、和室には広縁を設け、その間には雪見障子を入れることで、外部との距離感を住み手が様々にコントロールできるようにしています。
そして1階の雨戸は稼働型とし、夜間セキュリティーを確保しつつ窓を開け放つことも可能なようにしました。

以上のように、建具を様々に工夫することで、住み手の工夫により様々な住み方が可能となる住まいを実現しています。

もう一つのコンセプトである「風通し」に関しても工夫しました。
まず、玄関上を吹抜けとし、全ての居室は引き戸を開け放てばその吹抜けに連続することが出来るようにしました。
このようにすることで、全ての空間を1体化させることができるようにしています。

さらに引き戸を積極的に採用。
欄間を設けて空間を連続させることができるようにしています。
また、雨戸を稼働型とすることで、雨戸を閉めた状態でも窓を開け放つことで「風通し」を得ることができるようにしています。


このように、全体計画においては従前地盤をそのままに従前樹木を活かした計画とし、建物は「平成の京町家」のコンセプトを全面的に取り入れた計画とすることで、環境共生の住まいづくりを追及しています。






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